群集心理 | ナノ




せっかく跡部財閥が手配したシェフが作った料理だし、このまま平素なものばかり食べるのも勿体ない。明日は大胆に……あーいや待てよ。中華料理はニンニク臭くなる、イタリアンは口の周りが汚れやすい。…よし、やっぱり和食にしようかな。

夕食後、部屋の前で幸村君と別れて風呂に入った。夜の9時半。まだ余裕あるなと乳液を塗りながら思う。肌のケアは一日たりとも怠れない。今の時期くらいからにきびや肌荒れが目立つんだから。部屋着に着替えた私は芥川君が待つ部屋へと向かった。

部屋はもうすでに戦場と化していた。行き交う枕はまるで銃弾、見事命中した向日君の顔は皺をつくりながら歪んだ。片手に力をためてピンポイントに投げる戦法もあれば、両手で次々に枕を飛ばしまくる戦法もある。この状況下において、私は悟った。

これ、
中に入ったら私死ぬ。


「…隅で体育座りしてたら根暗に見えるぜ」

「あんな危険地帯に飛び込んだら私絶対ぼこぼこにされる」

「まあ…男女の力の差は歴然だしぬぁっふぉ!」


言い終わるのとほぼ同時に枕が右頬に炸裂。ものすごい勢いでぶっ飛んだ宍戸君に同情の目を向ける。ちなみにこの枕投げに参加しているのは芥川君は勿論、忍足くんと菊丸君と乾君。驚くことに立海は一人もいなかった。まあ枕投げしたいと思うような人いそうにないしなあ、と思い苦笑する。ていうかそれよりも忍足君が命がけで枕投げしてるのがおもしろい。
それから数十分がたち、気のすむまで枕投げをエンジョイした彼らは私の回りに集まってきた。


「あー!そういえば!」

「どうした英二?」

「不二が言ってたんだけどさ、波江ちゃんって幸村君と付き合ってるの!?」

「ああ、確かに。ずっとお前ら一緒にいるもんな」

「いや、そこまで一緒ってわけでも…」

「Aー!幸村君って波江ちゃんの彼C?!」

「…あの、違うけど」



は?!、と皆目を丸くして驚きの声を上げた。まあ確かに幸村君と一緒にいる時が多いし(特に食事時)、合宿参加部員の中では一番仲が良いと言っても過言ではない。


「俺らから見たら十分恋人どうしに見えるで」

「そ、そうかな…」


いや、ほんとにもう。あんな彼氏欲しいよ私だって。彼女を大事にしそうだし。でもそんなの幸村君から願い下げだろうなあ。ここは親身になって、巣立つまで見守ろうじゃないか。実は堀さんとくっつくんじゃないかな、なんて践んでたりするんだけどどうだろう。

皆から質問攻めを受けている間、私はずっと明後日の方向へと視線を投げていた。さすがに就寝しないと明日起きれないからと11時には部屋に戻りげっそりとした。すごい、男子の恋ばな舐めてたわ。あそこまで話に花が咲くなんて、誰が想像しただろう。特に忍足君と乾君。乾君はデータのために、忍足君は恋愛に対する興味が彷彿とするらしい。映画は海外のラブストーリーをよく見るらしい。その話題では少し共感をえてしまい、今度映画鑑賞しないかと誘われたりもした。勿論、全力で断った。なんせ話の路線はたまにそれたものの、終始質問攻めを受けた私は疲労が更に蓄積していた。ベッドに潜ると自然に瞼は落ちていた。

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -