群集心理 | ナノ




氷帝の人達に配り終え、青学のコートに足を運んだ。向かう手前、芥川君に可愛い笑顔と共に枕無げをしないか誘われたがさてどうしよう。1週間と言ったものの、実質は3泊4日。なんだかんだで明日が最終日なのだ。朝は早くに起きなければいけないが、思い出だって残したい。9時から皆を呼んでるんだ、と嬉々笑う芥川君は是非弟に欲しかった。10時くらいまでなら大丈夫かな、と自己完結して先輩に声をかけた。


「すいません、ドリンクと冷えタオルと汗ふきタオルを持ってきました」

「お、わざわざありがとう。助かるなあ。皆さん!休憩ですよ!」


丸目がねがさらに大人っぽさに拍車をかける。この先輩、なんだかオーラが不思議な感じだ。ぼおっと少し無精髭をはやした先輩を見ているといつの間にか部員が全員集まっていた。


「おや、大石君と菊丸君は今試合かい?」

「はい」

「タオルふわふわだね。それにいいにおい」

「ありがとう河村君」


柔軟剤使ったから、と微笑めば河村君は感嘆の声をあげた。こうして部員の喜ぶ顔が見たいから、あんな重労働も弱音なく続けることができるんだろう。照れ臭そうに微笑み返してくれる河村君は本当に優しい人なんだろうな。私、優しい人は大好きだ。


「いつもすまない。名前は覚えたのか?」

「うん。手塚君だよね」

「ああ」

「その様子だと全員の名前は知っているようだな」

「い、乾君…」

「佐々木さん、このドリンクすごくおいしいよ」

「不二君…ありがとう」


皆が受けとるたびにありがとうと声をかけてくれる。それがまた嬉しくて頬の筋肉が弛緩してしまう。


「これも何かの縁でしょう」


よろしくお願いします、と口角をあげて愛想よく笑う最初に話しかけた先輩。3年で引退したけれど今回特別に付き添いで来たらしい彼を、私は見たことがある気がする。テレビに大和先輩について何かやってただろうか。そう全体的に落ち着いている青学を一瞥して考える。来年桃城君と海堂君が入部したら騒がしくなるんだろうな、なんて想像してまた笑みを溢した。

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