群集心理 | ナノ




「おはよう波江」

「うん、幸村君おはよう」


柔軟剤で再度洗濯したタオルを干し、ドリンクを作り、おしぼりのように絞られた冷えタオルを作って冷蔵庫にしまう。早朝を利用した事前準備はうまく事が運び、朝食の時間より10分早く終わらせることができた。部屋に戻って軽く身仕度をし、日焼け止めを塗り直してから部屋を出ると幸村君と遭遇した。ちょうど幸村君も朝ごはんをとりにカフェテラスへ向かっていたらしい。優しい笑みを浮かべて「一緒に行きたい」なんて誘われたら断れない。いや勿論断る必要なんて皆無だし、むしろ私から誘おうかと躊躇っていたくらいだ。間髪をいれずに「うん」と一言返し、カフェテラスへと足を進めた。


「相変わらず和食で統一するんだね」

「うん、一番これがしっくりくるし安心するから」

「ふふ、そっか」


イケメンだ…イケメンすぎる。私最近1時間に1回は幸村君を褒めちぎっている気がする。いやまあしかし無理もないよね。私は転生前からこのかたイケメンとは縁がないんだし。

幸村君とほのぼのしながら暖かい味噌汁を飲んでいると、後ろから私を呼ぶ声がした。お碗から口を放し、テーブルの上に置いてからその方向に振り替えると、そこには今朝会った美少年がいた。


「不二君」

「今朝言ってた写真、持ってきたんだけど…」

「あ、ありがとう。…ってうわ、すごく綺麗」


虹色に淡くグラデーションされた空と、逆光で黒く染まる建物。時間帯・場所・角度がどれも絶妙で、一般人の私がとぐろをまくような写真だった。


「じゃあ僕はもう行くよ」

「うん」

「(どうやら幸村には歓迎されてないようだしね)」


一瞬開眼して私と幸村君を一瞥する不二君に少しの恐怖を覚えた。あれ、怒らせた?深海のような深い紺の瞳は凶器の冷たさを孕んでいたわけではなく、ただ何もかもを見透かしてそうな不思議な恐怖だ。そそくさと去る後ろ姿を暫く眺めていると、不意に幸村君が私を呼んだ。


「早く食べないと、味噌汁冷めちゃうよ」

「あ、そうだねごめん」


このやりとり、デジャヴだ。なんて思いながらまた味噌汁を口にするのだった。

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