また明日、と幸村君と別れて自室に入った。自室、そう自室だ。ダイヤモンドが含まれた使い捨てコップとかあるけど、高級そうな上質なカーペットがあるけど、数日の間はここが私の自室なのだ。考えられないことに。まるで、ホテルに泊まっているような感覚だなと感動しながら風呂をさっと済ませた。
「の、のどかわいた…」
やはり風呂上がりにはくいっ、と一杯いきたくなる。酎ハイあたり。しかし私は一応中学生だしなあ、と悩んだ末にまあジュースでいいやと自己解決。小さな冷蔵庫へと歩み寄り、何かしら飲み物があるだろうと扉を開けた。するとまあ不思議、何もないなんて信じられない!ここは本当にホテルじゃなかったのね…なんてノリにのってアメリカン映画に出てくる女性のようなオーバーリアクションをとりながら項垂れた。少し歩いたところに自販機があったはずだから、そこで何か買うしかない。と小銭を持って立ち上がり部屋を出た。
そう、このような経緯をへて自販機まで来た私は他にも人がいるとは考えてもいなかった。
「あ、あれマネージャーとちゃう?」
「ほんとだー!ねえねえ名前何て言うの?!」
「まあジロー落ち着きいな、確か佐々木波江さんやなかったか自分」
「あ、はあ…」
「波江って読んでEー?」
「え、うん」
「佐々木さん、ジローの額に冷えタオル置かんかった?」
「お、置いたけど」
「それでジローが喜んどるみたいやわ」
ジロー、とはおそらくこのスリーピーボーイこと芥川君のことをさすのだろう。丸眼鏡の関西弁なボーイは忍足君だ。私の中で忍足君と手塚君と白石君は愛すべき馬鹿だと認識していたが、実際どうなんだろう。声優負けしないエロイ声だしこれで馬鹿やらかす子だったらすごく楽しそうだ。
「すごく気持ちよかったC!」
「(ジローは精神的に幼い分気遣いが上手かったり、隣におって安心できるような人間が好きやからなあ)」
「ふふ、よかったね」
「何かジュース買いに来たの?!奢るC!」
「え、いや大丈夫だよ」
「俺も、ここはジローに奢られてほしいわ。純粋な好意やし、受け取ってもろても構わん?」
「あ、うん…」
バヤリースのオレンジジュースを選択してがこんと音がする。ちなみに忍足君からもお願いされたのは、芥川君が一度しょげると少し面倒なことになるかららしいからだ。それにしても無邪気って素敵だ。芥川君が立派な中学生に見える。そうか、私一応まだ1年生なんだと実感できる。
少し幸せな気持ちに浸りながら、二人にお礼を述べて自室へと引き返した。