群集心理 | ナノ




「私が不二君を?」

「…あ、気にしないで。ただそうかなって俺が思っただけでほら、応援、するから」

「いやいや、好きじゃないよ幸村君」


あまりにも予想外な質問についアホ面になってしまった。ありえん。不二だってそりゃかっこいいだろうけど、所詮は若僧。恋愛対象として見れるわけがない。全面的に否定してしまった私は、まさかこれは友人をとられそうになったという嫉妬なのではとまた新たな仮説がたった。幸村君の顔を見るとわあすごくほっとしてるね、な顔でとんだ杞憂だったなと安堵した。


「本当に?本当に好きじゃない?」

「私は不二君より幸村君の方が好きだよ」

「ほ、本当っ?!嘘じゃない?」

「う、うん」


やけに真剣な幸村君に少したじろいだがよかった、絶交とかではなさそうだ。一気に安心感が押し寄せ顔がにやけてしまう。幸村君が一番大切だよ、とあながち間違えていない本心を口にすれば、幸村君の双眸がダイヤモンドのように輝いた。無邪気さを孕んだ瞳の輝きは幸村君が感じている喜びを雄弁に物語っている気がした。そして同時に、私たちの纏う空気がより一層穏やかになった。

料理とってくるね、と席を立った幸村君の後ろ姿を見送りながら焼き鮭と白米を咀嚼した。なぜ先に料理をとらなかったんだと心の中で突っ込んだが、よく考えればそれすらできなくなるほどに彼は悩んでいたんじゃないかと思った。はたしてこんなにあっさりと解決してよかったのだろうかとぼんやり考えがら味噌汁に口をつけたとき、声をかけられた。


「佐々木」

「…柳君、どうしたの」

「精市の様子についてだが」

「あ、幸村君ならたぶんもう大丈夫だよ」

「…そうか。お前と休憩時間に会ってから様子が明らかにおかしかったんだが」


ノートをぱらぱらとめくり、顎に手を当てて考える。どうしてだろう、すごく様になった動作のはずなのに、残念に見えてしまう。


「佐々木が関連している確率、100%」

「(柳君が苦手な確率、100%)」


その後少しの質問に答え、幸村君の割り込みによって柳君はそそくさと踵を返した。

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -