群集心理 | ナノ




ドリンクと冷えタオルと汗拭きタオルをかごにインして準備万端!とりあえず配布しに行こうと立ち上がり部室を出た。太陽は容赦なく紫外線を放出する午前11時。頑張れオゾン層!

ところで試合を待つ間の練習が自主性ってよろしいのだろうか。今日のノルマを作ってそれに励んだりする方が効率が良さそうだと思うのは私だけだろうか。

一応今は休憩時間とされているし、芥川君の件があって少し遅れてしまったがこれらを届けよう。試合が長引いて休憩時間とかぶった人達に関しては試合終了後に飲んでもらえばいい。


「やあ、佐々木さん」

「不二君……あ、はいこれとって。遅くなってごめんなさい」

「そこまで謝るほど遅くないと思うよ」


この優しさを含んだ口調がどことなく、幸村君に似てる。優しくてイケメンで運動神経抜群。神様は人間に似てやっぱり不公平だ。エゴの塊である人間を作ったくらいだし性格もひねくれてそうだな、と適当にいらぬ思索をする。


「カート押そうか」

「ありがとう。でもマネージャーの仕事なので」


いやそこは普通に考えてダメだろ。何選手に手伝わせてるのってなるじゃん。マネージャーは選手をサポートするためにいるのに、これじゃ意味をなさない。


「クス…律儀だね」

「え?」

「僕も1年だから、タメから始めないかい?」

「(え、何を?)」


勿論、不二が私と同年代なことは知っている。それなのにわざわざ敬語で話す理由。それは、悪く言えば他人行儀だ。けれど勿論初対面で敬語を話さない人だっている。

ならなぜ敬語になってしまうのか。それは漠然としているけど勝手に脳が「この人には敬語をつかえ」と指令を送るからだろう。明確に言えば、子どもらしさ。幸村君も柳君も真田君も仁王君も、何だかんだ言ってまだ容姿に幼さは残っている。まず幸村君は二重瞼の大きな瞳、ゆくゆくは男らしいスッとした目になるんだろう。柳君はおかっぱ、髪の毛を切った時はもう中学生として見れるかが不安なところ。真田君はザ・少年、これがあんな老け顔と言われるまで発展するなんて嘘だと思いたい。

幼さがまだ少し残っているために彼らと接するとき、安心して自然とタメになってしまう。しかし不二君や乾君はなんと私よりも背は高いし原作とほぼ容姿が変わって見えない。まあ乾君はメガネパワーのせいかもしれないが、中学生にしてはやはり外見も内面も大人すぎる。だから敬語でいたのだろう。


「う、うんわかった」

「それにしてもすごいね。冷えタオルまで用意してくれるなんて、周到だな」

「あ、ありがとう」


遠慮がちに微笑して流すと、不二君は優しい笑みで綺麗に笑った。もしかして今の私の言動は…いやもしかしなくてもすごく失礼なんじゃないだろうか。そうハッと気づいた時、いつもよく聞く高音を孕んだ声がした。


「…波江、」


幸村君だった。

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