群集心理 | ナノ




冷蔵庫の奥に入れた冷えタオルを取り出す。温くもなく冷たすぎず、ちょうどいい感じに冷えてくれた。あとは柔軟剤で洗ったタオルも共にかごに入れて運ぶのみだ。そろそろ乾いてる頃だし取りこもう。

部室を出て裏へまわる。なんだかんだで部室がまた広い。合宿専用に建てられたため当たり前だと言ってしまえばそれまでだが、中学生の部活にしては充実し過ぎている気がする。
暫く壁の側面を歩いたつきあたりで洗濯干場に到着。本当ここにくるたび思うけど、金の洗濯バサミってどうなの。

取り込もうと手を伸ばした時、一瞬人影が視界をよぎった。地毛とは思えない綺麗な金髪、整った容姿、気持ち良さそうに眠る姿。

…うん、あれ間違いなく芥川君だ。

しかしよく見ると木の根元で寝てはいるものの、日差しがさして少し暑そうだ。きっと眠るときは木陰になっていたんだろう。
何事も気配りが大事だ。とにかく声をかけてみて、冷えタオルをあげよう。そう思い冷えタオルを冷蔵庫から取り出し、少し離れた芥川君の元へ向かった。


「あのー、選手ですよね。起きた方がいいと思うんだけど…」

「ん〜やだ……むにゃ」

「……………」


ならせめて影のある場所に移動してほしい。このまま放置していては試合の時に呼びに来るのが大変だし、熱中症なんかも心配だ。紫外線にずっと当たるのもよくない。しかし彼、芥川君は動くどころか起きる気配もない。


「……これ、どうぞ」


手に持っていた冷えタオルを額の上に優しく置いた。芥川君はそれに少し反応して、「きもちいいC」と呟きながら無垢に笑った。あ、すごく可愛い。だがまだまだ仕事が残っている私は、ここに長居するわけにはいかない。干しているタオルを回収して、冷えタオルとドリンクと共に運ばなければいけない。練習試合の順番が回ってくる間は各自自由練習、と書かれていたからまずはその人たちから。


しゃがんでいた足を無理矢理立たせ、大きく伸びをしてから踵をかえした。

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