勉強会当日、幸村君に告げられた時間の10分前に到着するともう人影は見えていた。
「あ、波江」
「幸村君」
「ふむ、貴様が幸村が言っていた佐々木か」
「え…まあはい」
いきなり貴様呼ばわりってなくね?いやちょっと少し、一瞬イラッてきちゃったんだけど…。でも真田君は元からこんなキャラクターだし、私だから使った言葉ではない。というか私は大人なんだから、もっと寛容の精神で接していかないと。
「佐々木か」
「おはよう柳君。早いね」
「ああ、それはお互い様と言えることだ。それにしても佐々木が来るとは思わなかった。34パーセントだったんだがな」
「………そ、そっか」
やっぱり確率スキルは今の時点でしっかり身に付いているんですね。そんなに心理悟られてましたか。今日で会うの2度目なのに…なんか無性に悔しいよ。
その後、ギリギリにきた仁王君はともかく、数分遅刻してきた丸井君に真田君が声を張り上げて叱咤しなさった。幸村君も笑顔で見守っていたし、叱咤激励だと思っていたのだろうか。やっぱり白いのかも。
この周辺の地理を知らない私は、柳君に道を教わりながら図書館まで着いた。幸村君と真田君に挟まれながら勉強はできるのか…なんて思っていたら案外できたようで。ばっちり数学のワークを1周することができた。
「だめだ、ぜんぜんわかんねー」
「俺もじゃ。期末になると一気に難しくなったなり」
ふとその会話に視線を追えば、数学の発展問題に悩ませる二人がいた。赤と銀の髪、紅白揃っててなんか目立つなあ…
「その図形は、1、2、3、4を線対象にひっくり返して表したものじゃないかな?」
「え?これなんて完璧"王"って…うわマジだ!」
「算数的な規則に従って並んどるきに、漢字はないじゃろ…にしてもおまん、すごいのう。これでも数学は得意なんじゃが」
「ふふ、ありがとう」
みんな、いい人たちばかりだなあ。二次元で見てきたとはいえ、実際に触れることはまずなかったので少し感動した。それに、丸井君と仁王君の役に立てたということが嬉しい。中学生相手だとしても、誰かの役にたてるって嬉しいことだ。私は素直に漏れた笑みを浮かべた。