群集心理 | ナノ




6月中旬。じわじわじっくりと蒸し暑くなるこの季節。雨で少しだらけているような教室で、私はしんどそうに溜め息をはいた。

雨はやはり、どうも苦手だ。気持ちの悪い湿度、肌と肌が密着するときの妙な粘り気。傘だって邪魔くさいし……あーだめだ。考えれば考えるほどネガティブ思考になる。やめよう。


「波江」

「あ、幸村君どうしたの?」

「明後日の木曜からテスト1週間前だから、今週の土曜日に勉強会を開こうと思うんだ。波江も来てほしいんだけど」


そうか。もう1週間前か…。勉強会…なんかそのメンバー、すごく嫌な予感がする。嫌な予感、っていうかできるだけそこでお会いしたくない人が一人いるよね。たぶん。


「メンバーは真田と柳、それから仁王とブン太が来るんだ…たぶん柳以外は全員初対面かな」


ほらねー柳君あんな賭けした後に勉強会開くとかもうどぎまぎするよ。
例えばだ。目の前に柳君が勉強していると仮定する。彼が出している教科は社会(一番キライなの)。その社会の問題をちらりと一瞥すれば、まるで見たこともない漢字の羅列………


「顔色悪いけど大丈夫?」

「……う、うん」


怖すぎる!なんか私知らない間に柳恐怖症根付いてきてるよ。まさか彼はこれが目的だったのか!?いや、それはないか。
柳君以外の他のメンバーも皆テニス部レギュラー陣だったな…幸村君からあまり話は聞いてなかったが、この頃から仲良かったんだ。まだあと…えー、ジャック(?)と柳生君がいないか。まだ部活には入ってないのだろうか。


「(どうしようかなー…)」

「………」

「(柳くんいるしなー…)」

「…どうする?」

「………うん、いく」


いくら柳君がいるとはいえ幸村君からのお誘い。唯一の友達の誘いだからしかたがない。そして雨がさらに私の気分を萎えさせるのだった。

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テーマ「人外ファンタジー」
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