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マイ宇宙

3時間目の休み時間。ぼんやりとうつろな脳に鞭をうち、なんとか授業をやり過ごした。「起立、礼」の合図が終わっても眠気はなかなか治まらず、椅子に座り頭をかくんと机に放り出した。4時間目の授業に向けて体勢を整えないとね。そう考えのんびり眠りにつこうとしたときだった。女子の悲鳴が教室中に響きわたり、あまりの大音量に私の眠気は一気に覚醒。どうせあの王子様たちがきたんでしょと呆れながらも少し頭を上げると、案の定予想は的中していた。


「お、八重が起きるなんて珍しい」
「……こんなうるさい中眠れないよ」
「……ま、それもそうか」


クラスメート兼友人である真子が飽きれ半分で王子様を見る。ちなみに真子は私の唯一の友達である。それを真子に言えば、「あんたアンパンマンより友達少ないのね」と残酷なツッコミをされたが。
多くの女子生徒の目をハートにさせる人気者なイケメン、その多くが男子硬式テニス部の元レギュラー達だ。勿論元レギュラー全員というわけではないし、他のサッカー部や野球部にも爽やかイケメンはいる。ただテニス部元レギュラーはイケメンが集いすぎた。本当に美形って罪だよなと思う。周囲からは高嶺の花のような存在として認識されている。

私は彼らが嫌いなわけではない。というか、面識ないからあまり気にしてない。ただ女子の過剰な反応が睡眠の妨げになったりしてあまり快く思わないだけだ。のんびり気ままに、それが私のモットーである。目を閉じて3秒で寝れる眼鏡猿ほどのスピードは持ち合わせてないけれど、それでも“毎日昼寝は当たり前・だらだらはジャスティス・マイペースで何が悪い”という精神を持ち合わせている。そんな私にとって彼女達は、……睡眠妨害以外特に何の害もないか。


「ほんと幸村人気だよね」
「真子ちゃん好きなの?」
「まさか。あいつ絶対裏あるって!あと私の中で爽やかイケメンは風早君だけだから」
「それ少女漫画見すぎ」
「さだこぉぉおお!!」
「うるせーなおい」


確かに幸村君とか同じクラスの柳君とか……あとは覚えてないから無理に思い出すのはよしとこう。彼らはすごくかっこいい。思春期を生きる女子中学生にとって彼らは活力源であり羨望の的になるのも無理はない。校内のジャニーズ的な存在なんだろう。けれど、私は私の好きなように学校生活をのんびり過ごす。

中学生の当たり前を噛み締めて生きようではないか。

そう考え、私は自然と頬の筋肉を緩ませた。




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眼鏡猿=のび太
風早君=君に届け
さだこ=君に届け


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テーマ「人外ファンタジー」
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