thx | ナノ
残酷なイタズラ

ようやく濃い平日が終わり、週末を向かえることができた。そろそろ秋服が必要だと思った私は、新しいスキニーとロンティーを買いにショッピングモールへ来ていた。家で寝転がっていても暇だし、一日中家で過ごすと無意識のうちにストレスが溜まる。雑貨なんかのウィンドウショッピングをかねて、一人虚しく来たわけだ。ユニクロでサイズや伸びを確かめてスキニーを購入し、シマムラで細いボーダーと小さな水玉のロンティーを2着購入した。雑誌にのっているようなレトロな服もフワフワな服も着ないし、トレンドカラーもあまり取り入れない。そこまでオシャレに執着しない私は、アラサーが着るようなひかえめで単調な格好しかしないのだ。
一人でのんびりこんな一日を過ごすのもたまにはありだろう。そう言い聞かせ私はモスバーガーで一息ついた。勿論、財布の紐は緩む一方だ。今は15時だから帰る頃には夕方になりそうだな。電車で二駅、駅から家まで徒歩十数分の距離だから、散歩感覚でまったり帰ろう。そうジュースを飲み干し、席を立つ。マクドと違いここはジュースの料金が高い分従業員がトレーを下げてくれる。手荷物を持ってそのまま外へ出ると、女の子の泣き声が聞こえた。嗚咽をあげながらわんわんと泣きわめく声がショッピングモールの中央広場に響く。その発生源へと視線を移すと、泣いている女の子とばっちり目が合った。その女の子は確かに、少し前に私の家でマリオパーティーをした女の子だった。私を見た女の子はすぐに立ち上がり、全速力で私の片足にしがみついた。


「おねえぢゃああん、っく」

「え、ど、どうしたの」

「あたしきらわれ、ひっぐ」

「えーと、とりあえず落ち着いて」


腫れた目を両手で擦りながら俯く女の子に、一体何があったんだろうか。気にはなるが、今私がするべきは女の子を宥めること。確かに一度、計り知れない人の悩みを無闇に聞くべきではないと言った。けれどそれはしっかりと自我が確立したらの話だ。保育園に通うような幼い子は、誰かに吐き出さないと情緒不安定になって壊れてしまうのではないかと懸念してしまう。だから、この子に何があったかは、きちんと母親が聞いてあげるべきだ。私はベンチに二人で移動し、隣に座る女の子の背中を優しくさすった。

ある程度落ち着きを見せた女の子は、私が貸したハンカチを返した。


「あたしね、今日ゆうなちゃんとめいちゃんとみさきちゃんとめいちゃんの家に遊びに行く約束をしてたの。みんな一緒だからってママも許してくれてね、みんな待つ場所まで送ってくれたの。でもね、道の途中でみんながここで待っててって言ったから待ってたのに、ずっと待っても帰ってこないの。それでね、みんな探してここまできたの。あたしきっと、みんなに嫌われたからみんなと家に行けなかったの」


仲間はずれ、ということだろう。こんな幼少期から仲間はずれの怖さを味わえば、もうそれはトラウマだろう。けれど、私は何て言葉をかければいいかわからない。女の子が笑顔になれるような言葉を簡単に思い付くほど、私は偉人でもない。女の子の片手を握り、家に帰ろうかと声をかけることしかできない。お母さんにもその話をしてあげてと、言い聞かすことしかできない。女の子はベンチから立ち上がり、小さな手で握り返して頷いた。

駅まで女の子の歩幅に合わせて歩き、女の子の友人の話を聞いた。子ども用の切符も買って渡し、二人で改札を通った。


「おねえちゃん」

「ん?」

「…またおねえちゃんのいえにあそびにいきたい、です」


私は頬を緩ませて、いつでもおいでと告げた。破顔した女の子はそのまま電車に乗り込み空いた座席に座ると、安心したのかすぐに眠りについてしまった。正面に広がる窓越しの夕焼けを見て、今日は荷物が重そうだなと思いまた頬が緩んだ。


「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -