今日もまた権蔵さんのところでほうれん草を買い、家で胡麻和えと鮭のムニエルを作ることにした。どちらもそこまで手間のかからない料理だからちゃっちゃと終わらせちゃおう。そう思い身支度をすると赤也君がキッチンにきた。 「どうしたの?」 「世話になってるし、料理くらい手伝おうと思って」 「大丈夫だよ、手軽なやつだし」 「いいから気にすんなって!」 「そ、そう?」 お言葉に甘えて、ムニエルをつくってもらうことにした。ムニエルなら切る作業もないし手本見せなくてもわかるだろうから。とりあえず鮭を洗うように言う。昔はおばあちゃんとよくキッチンで手伝いしたな、なんて回想してしまう。今は巾着袋を作成中だそうな。今のお弁当袋ももう使い続けて4年はたつから、新しくまた作ってくれるそうだ。私すごく幸福者だなあ。 「次どうすればいい?」 「めりけん粉つけて」 「おしっ」 「赤也君って料理作るの?」 「これが初めて」 「うそっ?!」 「大抵インスタントとかマクドで済ませてるから」 そんな風には見えない。だって案外手先も器用だし(たぶん)。信じられない。 「家帰ったらさ、部活でへとへとで何も手伝いしてねーけど…料理って楽しいんだな」 「うん。あ、フライパンに油入れて加熱して」 「おう」 胡麻和えは完成。小鉢に盛り付けて炊きたてのご飯をお碗につぐ。白くて水気もちょうどよく含んでいて、宝石のようにキラキラしてる。いや、この一粒のお米には、宝石以上の価値がある。汗水垂らして誰かがこの一粒のお米をつくるために費やした時間や労力がすべて積もってる。 「赤也君って、教えるの上手だね。経験あるの?」 「えっ、マジ?!いやまあ、中3の時に部長だったから教えてたけど」 「上手だって言われなかったの?」 「まあ(当たり前だと思われてたし)」 「そっか、みんなシャイだったんだね」 「(なんで!?)」 |