「あー、その、さっきはごめんね」 「あー…」 結局祐子さんは潰れるまであの暴君暴挙をやめることはなかった。食器の片付けをする間もなく祐造さんに帰るように言われ、しぶしぶ帰路を辿っていた。雲からのぞく半月からの光が3人を優しく照らす中、祐子さんの事情を話した。 「お酒を飲むといつもああなるんだよね」 「ふーん…ってはあ?!いつもかよ!」 「はは…。だから絶対に祐子さんにお酒を勧めないって暗黙のルールがあるんだ」 今回一番被害をこうむった赤也くんはぐったりしながらのろのろと歩いた。いつまで赤也君はうちにいるんだろう。勿論嫌みとかではなく純粋な疑問なわけで、私としてはずっとここにいてほしいくらいだ。同年代の友達が村にいるだけで、こんなに毎日が数倍輝きに満ちていた気がする。 しかし、赤也君には家族がいるし友人がいるし、もしかしたら想い人がいたかもしれない。部活の先輩だっているんだ、ここは本当の赤也君の居場所じゃない。そう考えると居場所って難しい。人によって捉え方は様々あるし、自分がここだと思っていても他の人が一人でも否定すればもうそこは居場所じゃない。時間の経過につれてそれはより一層、己の中で重要視されてくる。 ここは駄目なんだ。そう私が悟る限り、赤也君の居場所はここではなくなる。 「帰ったらもう二人とも寝なさい」 数分の沈黙を破るように、おばあちゃんは私達にそう告げた。物言いからして恐らく、私が考えていたことはお見通しなようだった。鍵をかけずに出たため、木製の玄関扉がきしむ音をたててゆっくりと開く。廊下つきあたり右にある私の部屋の向かいに赤也くんの部屋(仮)がある。私達は向き合って、おやすみと声をかけあって、部屋へと引きずりこまれた。 |