「さっさと酒つがんかいやあぁあ!!」 「えっ?…ぎゃあああ!!」 しまった。大変なことになった。裕子さんは酒を少しでも体に取り入れてしまうと性格が変わってしまう人だ。権蔵さんが飲んでいた酒を水と勘違いして飲んでしまい、その矛先を今赤也君に向けている。 「…にぎやかじゃのー」 「う、うん、そうだね」 祐造さんは見慣れた風景に苦笑し、権蔵さんは酔って一人でぶつぶつ喋っている。どうやら言葉を汲み取るとそれは嗜好している陶芸に関することだ。本当に好きなんだなと感心しながら、喧騒が不似合いすぎてふと笑みがこぼれる。 「赤也君、がんばれ」 「くっそなんで俺なんだよ!」 「ちょうど向かい合う席に座ってるからだと思う」 「それだけかよ?!」 赤也君はあまりの豹変ぶりに怒りを通り越して驚いているらしい。裕子さんが優しいことをちゃんと知っているし、異変が起きて現状に至ることを理解しているから大人しく裕子さんの言われるがままになっていた。 「琴音ちゃん」 「あ、祐造さん」 アルコールで顔を赤く染めた祐造さんが、元々は赤也君の席であった私の隣に腰を降ろした。後でこれみんなで食べて、と言って差し出されたレモン味ののど飴を3つ、ありがたく受け取った。 「彼のこと、どう思ってるの?」 「彼って、赤也君?」 「うん」 いきなり紡ぎ出された言葉に私は少し驚いた。 「なんだかんだ言って優しい友達!テニスも教えてもらってるんだ」 「…………そっか(彼もかわいそうに…)」 その後祐造さんが言ったがんばれに、私はテニスのことだと思い笑って頷いた。 |