※現パロ
ぶーらぶーら、
「三郎、遅い」
ぶーらぶーら、
「お、まえっ…、ふざけんな…!」
ぶーらぶーら、
わたしは今、三郎と二人乗りをしている最中である。これが少女漫画だったら、甘い雰囲気を伴うドキドキな展開が待っているのかもしれないけれど、わたしたちにそんな雰囲気は皆無。まあ、目の前のこいつは別の意味で心臓バクバクだろうけどね。
「せ、めて、坂くらいは、降りろ、!」
ぶーらぶーら、
「がんばれ、男の子」
ぶーらぶーら、
「足、を、ふる、な!」
あら、怒られた。そりゃあ自分が必死こいて自転車漕いでるのに、後ろ足をぶらぶらされるとむかつくよね。しかも坂道だしね。しょうがない、優しいわたしはおとなしくしてすぽーん
「あ」
「……」
足を止めようとした瞬間、勢いがありすぎたのかなんなのか、わたしの靴は綺麗に孤を描いて飛んでいった。わあ、ナイスショット。
「ナイスショット、じゃない!何をやってるんだおまえは!」
「ごめん、でも後ろに飛ばなかっただけいいじゃん」
そういう問題じゃない、とか何とかぶつぶつ言っていたけれど、「ほら、止まってるよ」と声をかければ三郎はしぶしぶながらも自転車を漕ぎ出す。わたしを乗せたままこの坂道を上ることができるこいつは、やっぱり男の子なんだなあ。そんなことを思いながらじんわりと汗が滲む首筋を眺めていると、急に自転車が止まった。
「?」
「ばか、早く靴取ってこい」
「…三郎、取って」
「はあ!?」
おまえは自転車を漕がせるだけじゃなく、靴まで取りに行かせる気か!?
いや、三郎の言いたいことはわかるんだけど、わたし片方しか靴ないから。
そう言えば、しぶしぶ靴を取りに行ってくれる。やっぱりなんだかんだ言って三郎は優しい。だからわたしはいつまでも三郎の優しさに甘えてしまうのだ。以前、友達にそうもらすと「三郎くんと付き合えば?」と言われた。けれど、それとこれとは話が別。三郎とわたしが付き合うなんて、天地がひっくり返ってもありえない。ときめきとは無縁の男とどう付き合えというのだ。
「どうぞ、お姫様」
わたしに靴を履かせながらにやりと笑う三郎にときめいたなんて、気のせいである。
(100422)
三郎と2ケツで「どうぞお姫様」