笹山兵太夫という男は天使の皮を被った悪魔だ。なんでみんなあの胡散臭い笑顔に騙されるんだよ。

いつからだろう……ああ確か席替えで隣の席になってからだ。あまりにも日常と化してきたから忘れていた。きっかけは覚えていないが、何かの拍子に笹山くんにこれはいいカモを見つけたという顔をされて、それからだった気がする。毎日奴隷のようにパシられて、心身ともに苦痛の耐えない毎日。別段弱味を握られているというわけではないのに、何故だろう。笹山くんの言葉には逆らっちゃいけないと思わせる何かがあるのだ。ここまでで一つ言っておくが、私は断じてMではない。




「何ちんたら漕いでんの。早くしないと遅刻するでしょ」



恐らくこの時間なら、走ればギリギリ間に合う時間だ。
それなのに何故、

笹山兵太夫は私の自転車の後ろに乗っている!

普通逆だよね、男の子が漕いで女の子が後ろに乗るものじゃないのかなぁ。…そんな常識はこの笹山兵太夫という男(ドS)には通用しないと分かっているけど。



「僕はどっかの馬鹿みたいに遅刻なんてことはしないんだよ。だからさっさと漕いで」



だったら走るか笹山くんが漕げばいいと思いまーす!……と心の中で叫んでみる。だって見てみなよ。私もう息あがってるんだからね…。

全く最悪だ。今日は珍しく余裕をもって起きれたから悠々と自転車に乗っていたのに、この様。いつもより早く登校しようなんてのは間違っていた。案外遅刻もバカにできなかったのかもしれない。
それにしても、意外と笹山くんは重い。細身に見えてもちゃんと男の子なんだね…とは言えない。あ、聞こえてないよね?口に出してないよね?うっかり聞こえていたら最後、笹山くんに殺されるのは目に見えている。



「うぅ…夢だったのに…」

「何が?」

「2ケツ…って、はぁ…好きな人とやりたいなって…はぁ」

「……全く鈍いよね」

「え?何か言った?…はぁ、ヤバい吐きそうだ…」

「何も言ってないよ。耳悪いんじゃないの?ほら、吐く前に漕ぐ」



笹山くんの鬼……くそう、初めての男の子との2ケツは彼氏がよかったよ。彼氏なんていないけどさ。
そういえば笹山くんって女の子乗せたりすんのかなぁ?……いや、絶対なさそう。漕がせてるのだって見たことないし…てかそもそも悪魔の笹山くん知ってんのって私だけ、だよね、多分。あれ?なんかよくわかんない…。



「笹山くん私嫌い?」

「いいから漕ぐ」

「はい!」



とりあえず遅刻はやだし!一生懸命チャリを漕ぐ。最後の一直線だ。よっしゃあラストスパートかけるぜ!………ってあれ、はぐらかされた…?
んなこたないか。笹山くんに限って、ね。



「鈍すぎて嫌いだよ」

「やっぱり!」





100402
設定→兵ちゃんに2ケツさせられる






「仕方ないから特別にしてあげようか?」

「………は」



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