罰ゲーム決定戦
パチパチと炎の爆ぜる音が心地良い音として談話室を満たす。
いつものメンバーが一様に集まった談話室の中心では、シリウスとジェームズが真剣にチェスに取り組む傍らで、リーマスは優雅に読書に興じ、ピーターは少し離れたテーブル席で課題に頭を抱えていた。
「どんな戦況?」
女子寮から降りてきたナマエがリーマスの隣に腰かけて問いかければ、リーマスは視線を上げることなく「シリウスが負けるんじゃないかな」と小さく笑った。
「学年一位には適わないね、万年二位は」
「うるせーぞ外野」
ソファに盤を置いてチェスに興じていたシリウスもまた視線をそこから逸らすことなく返す。優勢のジェームズは優雅に足を組み、ソファの背に腕を回してまるで局面を見下ろすかのように頬杖をついている。
テーブルに置かれた菓子に手をのばしながら二人の手を見るがあまり面白くない。開けっ放しに放置されていた百味ビーンズの箱を手に取り中の覗いたナマエは、しかしそれには手をつけず元の場所に戻した。それを傍目に見たリーマスが自身の隣に置いていた百味ビーンズの箱を差し出した。
「ありがとう」
さっと中を覗いて選んだ砂糖漬け果物味に舌鼓をうった。
数度、互いに駒を動かしたかと思うとジェームズの口から「チェックメイト」が聞こえた。
「終わった?」
「くっそ」
「これで四連敗だね、ご苦労さま」
それまで視線を上げなかったリーマスがそこで初めて本から視線を外してシリウスを見た。さっさとチェス盤を片付け始めるジェームズの横で悪態をつくシリウス。ナマエはすぐさま立ち上がるとテーブルに置かれていた百味ビーンズの箱を手にシリウスの隣に移動した。
「だいたいなんでこんな不毛なこと」
「はいはい、無駄なこと言ってないでほら、あーん」
手にしていた箱から適当に数粒とったナマエはそれを喋っていたシリウスの口に放り込んだ。口を閉じた瞬間に噛んだのだろう。きっと彼の口の中は地獄絵図だ。
ハズレ味のみが入ったその箱の中に再び手を突っ込んだナマエは先ほどより多めのそれをシリウスの口の前に差し出す。逃げられないようにとシリウスの身体をホールドしていたジェームズが彼の頭を固定して。
まだ嚥下されていない先ほどのビーンズが残る口の中に、まるで流し込むようにハズレ味のそいつらを投入されたシリウスは抵抗もむなしく、声にならない叫びと共に断末魔を上げた。