見つめる彼女の視線の彼方
「二人とも、どこに行くんだ?」
わずかな手荷物を片手に並んで歩いていたナマエとチャーリーの背後から声をかけたのはビルで、彼はナマエの横に並ぶと二人の歩調に合わせて歩きだした。
「図書室。レポートあるんだ」
ビルの問いに答えたのはチャーリーで、ナマエはそれに対して同意を示すように頷いた。
「途中まで一緒にいいか?」
「マクゴナガルに呼ばれてるんだ」と肩を竦めたビルに、ナマエがどうしてかと問いかける。
成績優秀生として何かあるのかもしれないと茶化すビルに、ナマエが楽しそうに相槌を打つ。その姿はクィディッチをしているときとはまた違った表情で、そんなナマエの横顔をちらと盗み見たチャーリーは盛り上がる二人の隣で小さく息を吐いた。
「なぁ、チャーリー?」
随分と話に花を咲かせる二人の隣で、聞くともなしに二人の声を聞き流していたチャーリーは不意に名前を呼ばれて声を上げた。
「え? なに?」
はっとしたように二人の方に顔を向けたチャーリーの表情はまるで素っ頓狂で、ナマエが「聞いてなかったな」とチャーリーを小突いた。
「どうした、ぼーっとして」
秀眉を上げて尋ねてくるビルに「ごめんごめん、レポートのこと考えてた」と適当に返したチャーリーは「で? 何の話?」と首を傾げた。
「だからね、」
話し始めたナマエの声を聞きながら、けれども彼女の視線の先がビルであることに気付くと、チャーリーの興味は途端に失せて、彼女の横顔をぼんやりと見ながら、その声を適当に聞き流しながら静かに口を噤んだ。