彼女に何度も恋をした


 今思えば、出会ったその日から彼女に惹かれるのを感じていたんだ。人狼という負い目があったせいか、僕には友達なんか出来ないだろうし、優しくしてくれる人もいないだろうと思っていた。ましてや女の子の方から歩み寄ってきてくれるだなんて、想像もつかなかった。
 よく考えれば僕が人狼なんてことを知っている人が入学したばかりのホグワーツにいるわけがないのに、って笑えるけど、入学したての頃は酷く不安だった。
 そんな時、いつも彼女は僕に笑顔を向けてくれた。きっと僕が新しい環境になじめずにいると思ったんだろう。
 僕に声をかけてくれた彼女の優しさに触れてからというもの、僕は彼女の行動一つ一つに、何度もいとおしさを感じて、惹かれていったんだ。そしてこの恋を自覚してからは本当に毎日、彼女の一挙手一投足すべてに恋をしていたような気がする。
 ことあるごとにバカみたいにときめいて、胸がざわめいて、一人で勝手に傷ついて、たまに彼女を傷つけた。そして彼女の優しさに許してもらって、また恋をする。何かあるたびにますます好きになる。
 ジェームズがリリーを追っかけまわしているのをシリウスがいつも意味分からなさそうにしていたのを、僕はいつも傍で見ていた。シリウスが「どうしてあそこまで」と言うのに合わせて「さあ?」って笑っていたけど、本当はジェームズがリリーに夢中になる気持ちは僕には分かっていた。だって僕にも夢中になれる子がいたから。

 彼女と出会ってからというもの、僕は彼女に恋をしない日はない。だって今もほら、キッチンに立っている君の後姿ひとつに愛おしさを感じてる。毎朝毎晩、僕は君に恋するのを止められない。だから君も、僕に恋して?


(そしてきっと、これからも恋をする)

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