奪われた自由と何か


 明かりの消された部屋に不自然に揺らめく蝋燭の明かり。ベッドのサイドテーブルに置かれたそれが揺らめくたび、ナマエの不健康とも思えるような仄白い肌を橙に染める。
 ベッドの上には目隠しをされ両手を拘束された格好で、最低限度の衣服を纏っただけのナマエ。ベッドヘッドに集められたクッションに半ば身を埋めるような格好で座っている彼女の肌にすっと指先を這わせれば唇をぎゅっと真一文字に結んだ。

「どうした? 声は出せるだろう?」

 服従の呪文で逃げられないようにはしてある。しかし口は利けるようにとあえて首から上は自由にしてやっている。それなのに口を開かないナマエは見ていて加虐心をそそられる。いつか媚びを売ってきた女共を相手にしたときのような猫なで声で問いかけてみればナマエは僅かに唇を開いた。

「や、……めて」
「それは聴けないな」

 大腿の内側を撫で上げながら膝裏に手をいれ、片足を持ち上げてやれば俯き、歯を食いしばっている様子で、抵抗できない分よけいに羞恥を誘うのだろう。これでもかというほど足を上げさせ膝裏の一点に人差し指を当てて「知ってるか? ここにほくろがあるんだ」といえば僅かながらにナマエが頭を振った。ナマエの足を割ってそこに体をねじ込めば堅く閉じられたナマエの瞼が僅かに震えた。
 高く上がった大腿に頬を当てればナマエが「あっ」と声を漏らす。そのまま頬を擦るようにすれば視界に入ってきた点。みつけたほくろにキスを落とせば「あっ、やだ……っ」とか細い声が上がった。その声に僅かに自然と口角が上がる。
 大腿をおろしてやりながら今度は腹部をそっと擦ってやる。柔らかく吸い付くような肌から手が離せない。腹からそっと脇の方に手を滑らせればくすぐったのか、「ひゃあっ」と今まであげなかった声を上げた。

「ここが弱いのか?」

 先ほど声をあげた箇所を繰り返すように撫でてやれば嫌なのか、くすぐったいのか、僅かに口角を上げて笑みをこらえるような状態でいやいやと声をあげる。

「やめっ、くすぐった……っ」

 必死にそう言うからピタと手を止めてやれば声も止んだ。小さく呼吸を繰り返すナマエに今度は腹筋から胸部にかけて撫で上げれば今度はくすぐったさなどではないような嬌声にした声が上がった。
 下着で綺麗に持ち上げられた胸の内側を撫でればそれまで以上の柔らかさがあり、同時にナマエの肩も揺れた。僕の意思ですでに服従の呪文は解かれ自由のみになっているということに、彼女は気付いていない。
 ブラのストラップを肩からずらしながら二の腕を軟く握れば「んっ」と声を漏らす。胸の前にあった腕を下げさせながら鎖骨にキスをすれば頭上で吐息がこぼれるのが気配で分かった。

「どうした、感じているのか?」
「ちがっ、あ、」

 嫌だ嫌だと言い続けながらも体は素直に反応を見せ始めている。そんな素直じゃないところが面白くて、ナマエの変化する顔が見たくて、目隠しを外した。

「……」

 暗闇の中でもしっかりと見据える黒い瞳が扇情的に僅かに濡れている。至近距離で目が合ったためか一瞬身を引いたナマエに、そうはさせないと後頭部を捉えてすかさず唇を奪う。自由を得ているナマエは拒否しようと思えば出来るのに、それをしない。それはつまりそういうことなのだと理解して、彼女の背に回した手でそっとフックを外した。

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