Morning kiss


 朝、朝食の時間より少し早めにグリフィンドールの寮から出て図書館に向かう廊下を歩いていたら後ろから「ナマエ!」と声をかけられた。小走りで近づいてくる足音を聞きながら誰だろうと足を止めて振り返ればタイミングよくその誰かが私の肩に手を置いて、ちょうど振り返った私に影を作る。
 ふにっ、という具合に私の唇が何かに触れて、すぐに視界いっぱいにリーマスを認めた。

「おはよう」
「え、今キスし……え?」
「どうしたの?」

 どもる私にリーマスはさも不思議そうに小首を傾げる。

「……今、キスした、よね?」
「うん、それがどうかした? キスなんて挨拶でしょ?」

 そう言ったリーマスはもう一度「おはよう」と返事を求めてくる。
「お、おはよう」と内心いろいろと取り乱しながら返答すればリーマスは「図書館? 一緒にいい?」と思考停止している私に目もくれずに歩き出す。動けずに突っ立っていればリーマスが「何してるの、早くしないと朝食に間に合わなくなるよ」と私の腕を引いて歩き出す。それにつられて歩き出した私の頭にはもう図書館へ何をしに行こうとしていたのか、その記憶はすっ飛んでいた。

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