Don't touch me!



「今後一切僕に触れてくるなっ!」


ひょんなことから(俺が無理やり押し倒したのが原因なんだけど……)ヴォルフを怒らしてしまった俺は、今。
人生最大の悲劇にたたされているのだった。

いやいやいや。

「触れてくるな……って、さー」

もうかれこれ1週間だぜ?!
1週間もヴォルフに「ちゅー」とか「ぎゅー」をしていない俺はそろそろ限界がきていたわけで。
いわゆる……。

「欲求不満ーーー!!」

あーもう。
こんなことならあの日我慢しておけばよかった!
そんな後悔ばかりが頭をよぎる。
だいたいお触り禁止っていつまでだよ!
今後一切ってことは……。
まさか一生?!
そんなの、思春期健全男子高校生に耐えられるわけないじゃん!

「はぁ…」

ああ、一気に憂鬱になってきた……。
出てくるのはため息ばかり。

するとその時、俺の部屋のドアをコンコンと叩く音がした。

「ユ、ユーリ!いるか?」
「ヴォっ、ヴォルフ!?」

さ、最悪だ。
……この欲求不満絶頂のタイミングで!!
無理無理無理無理!
また押し倒しちゃいそう。
よし、ここは低調にお断りをしよう。
そうしよう。

「入るぞ」

するとヴォルフラムは俺の返事も聞かずに部屋に入ってきた。

「ま、まてまて。あ、あのさ……ヴォルフ」
「ユーリ!!!」

ズカズカと歩きながら大声で名前を呼ぶものだから、何かまた怒られるのだと俺は反射的に身構える。

「僕から言い出したことだし、自分からこんなこと言うのは情けないし、どうかと思う…」

かと思いきや、今度は何か言いにくそうに視線を泳がせている。

「ど、どうしたんだよ」

おそるおそる、声をかけてみる。
ヴォルフラムはあの、とか、その、とかを繰り返すばかりでどうにも煮え切らない。
思ったことをハッキリと言うタイプの彼が、ここまでモジモジしている姿を見せるのは非常に珍しかった。

「その、…僕は」
「……?」
「僕は……僕がっ!もう限界だ!!」
「えっ?」
「お前と接吻がしたいっ!」
「ななっ」

なんだって!?
ヴォルフラムが自らキスを望むのは珍しいので、俺は一瞬頭がフリーズする。

「お前にぎゅ、ぎゅーして欲しい……んだ」

なんてとんでも無いことを言いながら、俺の制服の裾をギュッと掴む。伺うように、俺を見つめるヴォルフラムの可愛さったら。
これで無自覚だとしたら相当タチが悪い。
突然舞い降りた幸せが信じられなくて。
俺はこれが現実ではなく俺の夢である気がして自分の頬をつねる。
うん、痛い。

「だ、だめか?」

なんて、不安そうに瞳を揺らすのは俺の可愛い可愛い婚約者。
だめかもなにも、そんなの……。

「ユーリ?」
「もちろん!!」

(全部頂くに決まってんじゃんかっ!)


その瞬間、俺の理性はぶっ飛んだ。



***


そしてそのまた次の日。
俺がまたお触り禁止指令を食らったのは言うまでも無い。


end


 
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