愛しの婚約者サマ!
ヴォルフラム。
俺、時々思うんだ。
俺達が出会ったのはやっぱり運命なんじゃないかって。
「俺さ、やっぱお前でよかったよ」
「何がだ?」
「一生隣で歩いていけるのが、さ?」
「……な?!そ、そんなの……っ!僕もだ!!このへなちょこ……」
そう言うと、俺の婚約者サマは顔を真っ赤に染めて俯いた。
……それは反則だろうが。
「これで無自覚だから恐ろしいよな」
「……なにがだ?」
「えーっとなんでもないよ!」
ははは、と乾いた笑いをすると、ヴォルフラムは不機嫌そうに眉間にしわをよせる。
こういうときの表情はさすが兄弟だけあって、グヴェンに似てるんだよな。
「ほーらっ!拗ねないで?こっちおいで、ヴォルフラム」
俺は小さい子供をあやすように、膝をポンポン叩いてヴォルフラムを呼び寄せる。
逆に怒らせちゃうかなとも思ったけど、ヴォルフは素直に膝の上に乗ってくれた。
「……別に僕が乗りたかったわけじゃないぞ」
「はいはい」
「ユーリがどうしてもっていうから乗ってやったんだ!」
出たよツンデレ……。
そんな様子が可愛くて、ちょっとだけ意地悪してみたくなる。
「そっか。残念。ヴォルフがそんなに嫌なら降りてもいいんだぜ?俺は」
「なっ!」
あからさまに悲しそうな顔をするものだから、なんだかちょっぴり罪悪感。
でも、もうちょっとだけ意地悪。
「そっか〜ヴォルフ俺の膝に乗るの嫌いなんだ」
「き、嫌いじゃない……っ!!」
嫌いじゃない、ということは?
ニヤリと微笑むと、ヴォルフラムはしまった、とでも言いたげに目を見ひらいた。
ツンデレって最初はよくわかんなかったジャンルだけど、慣れてくると本当扱いやすいんだよな。
くるくる変わる1つ1つの表情本当に愛しくて仕方がない。
「ゆ、ユーリのばか!もう嫌いだ!」
でも、今日のヴォルフラムはよく見てみると、少しだけ瞳が潤んでいる。
ちょっと意地悪しすぎただろうか。
「ごめん」
引き寄せて、金色の髪にちゅっとキスを落とすと、ヴォルフラムが驚いたようにこちらを見つめた。
「好きだよ?ヴォルフラム」
言葉に、出来ないくらいに。
言葉にすれば、するほどどうしようもなく愛しくなって。
俺は思わずヴォルフを抱きすくめた。
あのころは同じぐらいの背丈だったヴォルフラムも、今では丁度俺の中にスッポリ入る大きさで。
「ヴォルフ、また縮んだ?」
「ばかっ僕は変わっていない!!ユーリがまた勝手に大きくなったんじゃないか!」
「成長期ですから」
「なッ!僕も成長期だぞ?!」
80歳代後半過ぎてでいまだ成長期とか言われましても……。
いや、確かに魔族ならありえるのだろうか……。
俺は、更に背丈が大きくなったヴォルフラムを思い浮かべる。
うーん、でもやっぱり。
「お前はそのまんまでいいや」
「なっ!お前だけ大きくなるなんて卑怯だぞ!」
「だってさ……」
やっぱり、可愛いからこのまんま希望。っていったら、怒られそうだからやめておく。
「大好きだよ」
俺の瞳にはお前以外映らないから。
この先、何があってもずっと。
そう、この愛を永遠に誓おう。
神様にだって、仏様にだって、それこそ眞王陛下にだって誓えるさ。
なぁ?
ヴォルフラム。
運命って信じる?
俺は信じるよ。
だって、君に出会えたんだから。
「じゃ、一回戦いきますか!!」
「なっ、押し倒すなこのバカっ!」
end
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