君に花束を



愛しい君に
花束を捧げよう。

君に出逢えた喜びと。
君の隣にいる幸せを込めて。


―――


「あの、その……ヴォルフラムこれをやるよ」

そっと差し出した花束。
案の定ヴォルフラムは突然の贈りものに戸惑いを隠せない様子だった。

「ユーリ……!」

急なプレゼントは恋人の心をくすぐるって本当らしい。
そんなに嬉しそうな顔をされたら、なんだか俺まで照れてしまう。

「きっ綺麗な花だろ?!」

照れ隠しにそう言うと、ヴォルフラムはその花束を大切そうに抱きしめた。

「ああ…。本当に綺麗だ」

微笑むお前の方がよっぽど綺麗だよ、って思ってしまったけど流石に恥ずかしいから言えない。
受け取ってもらった事が素直に嬉しくて、顔がニヤけそうになる。

「き、気に入ってくれてよかった!俺、執務残ってるから戻るな!」

こういうのに慣れてないから、この空気に耐えられなくなってしまった。
俺がこの甘い空間から逃げようとすると、ヴォルフラムは「待て!」と俺を呼び止めた。
かと思いきや、消え入りそうな小さな声で俺の名前を呼ぶ。

「……ユーリ」
「ん?」
「その……ありがとう」

それだけ告げると、ヴォルフラムは耳まで真っ赤に染めてそっぽを向いてしまった。
ああもうっ!
なんでそんなに可愛いんだよ!
これで男とか、本当に詐欺だと思う。

「ど、どういたしまして!」

でも、此処でニヤけてしまったらお終いだ。
あくまで冷静に、カッコよく。

「……だけどこんな花、どうして。ユーリ、いつ花に興味なんか……」

そう言ってヴォルフラムは不思議そうに首を傾げる。
そ、それは。

「た、たまたま花屋で見かけたんだ!深い意味はないよっ!!!」

ちょっと苦しかったかな?とも思ったけど、ヴォルフラムはさほど気にしていないようで、「そうか。だけどほんとうに嬉しかった。大事にする!」とだけ言うと、花瓶を取りに部屋に戻ってしまった。
一人廊下にとり残される。

「…あんま、深く追求されなくてよかった」

俺は思わずホッと胸を撫で下ろした。
……まさか、言えるわけないだろう。

「……この花が」




ヴォルフラムに似てるなぁって思ったから思わず買っちゃっただなんて。







end



 
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