七夕
「ヴォルフはお願いごと決まった?」
「うぐぐっ……」
「うわっ!そんなに眉間にしわ寄せないで!ゆっくり考えれば大丈夫だから」
そういう顔をすると本当にグヴェンに似てるよな、とユーリは感心する。
「眉間にしわ……」
まあ、兄上に似ていると言われることは素直に嬉しいけど複雑だ。
僕のしわはより一層深くなった。
今日眞魔国ではユーリが企画した、七夕祭りが行われている。
地球のイベントなので、正確な内容を僕が知るわけもないが、猊下によれば短冊という紙にお願いごとを書くと願いが叶うとかなんとか。
僕ははそんなものに頼らなくたって平気だけど、婚約者が育った土地の文化も体験しておいた方がいい。
なんと言っても異文化コミュニケーションは円満家庭を築き上げるためには必要だからな。
だから断じて信じているとか、そんな事はないけれど、せっかく参加するのならちゃんとお願い事は考えたいのだ。
「んんんんん…」
しかし、お願い事って一つに絞れないものだ。
ユーリはもう何かしら書いているみたいだけど。
「そんな、固くならなくてもさ、何枚も書けばいいんだぜ?」
「え、いいのか?」
織姫も彦星も随分大盤振る舞いだと思った。
「もちろん!」
ユーリはそう言うと、自分の書いた紙を僕に見せる。
多分、5・6枚といったとこだろう。
欲深いやつだな、と言ったらうるさいと怒られた。
「何を書いたんだ?」
何を書いたのか読もうと試みたけど、ユーリの不慣れで不恰好な文字は少々読みにくい。
「え、やだよ見せたくないっ!」
「ユーリ、見せろっ!」
「やだ、やだっつの!!あ、こら待て待て待て!」
ユーリから短冊を奪い取ると、勝ちを確信した僕はニヤリと微笑んだ。
「ふっふっふ!僕を見くびるなよ!!」
「ちょっ!ああもう!!見てもいいけどぜってぇ笑うなよ、」
「もちろん……なになに……」
一枚目の短冊には野球が上手くなりますように。
二枚目の短冊には眞魔国の皆が幸せになりますように。
三枚目の短冊には魔王らしくなれますように。
四枚目の短冊には筋肉がムキムキになりますように。(ヨザックくらい)
と綴られていた。
実にユーリらしい。
そして、最後の短冊には。
「ヴォルフラムとずっと一緒にいられますようにっておいっ!!へなちょこ!!!こんなくだらないこといちいち願うな!」
「くだらなくなんかない!」
「だいたい、願わなくとも僕はユーリの側から離れるつもりは微塵もないからな!ユーリが嫌がろうとも、地獄の果てまでついて行く覚悟はとっくに出来ている。覚悟しておけ」
「……」
「ユーリ?何をしているんだ」
地面にうずくまるユーリと同じ目線に僕もしゃがみ込む。
ユーリは聞こえるか、聞こえないかぐらいの小さな声で言った。
「相変わらずの超直球ストレート……」
「?」
意味がよくわからなくて首をかしげると、ユーリは「まあ、いいか」と眉を潜めて笑う。
そして、思いっきり僕を抱きしめた。
あまりにも勢いが良かった為、床にに思い切り尻餅をついた。
「ヴォルフ、大好き!!」
「それは僕もだ……ってユーリ。急にどこに手を入れて……」
「俺を見くびるなよっ」
「あ、そのセリフはさっき僕が……。って!服を脱がすな!ユーリのばかああああ!」
織姫と彦星が出逢う頃。
僕らに何があったかなんて、絶対に言えやしない。
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後日、シンニチ談。
三男閣下が願ったことは「陛下が変態じゃなくなりますように」だったとか…。
end
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クダクダになったので多分少しずつ修正していきます\(^o^)/
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