ただいま



「ただいまーっと」

年末でなにかとバタバタしていたこともあり、今回のスタツアはやけに間隔があいてしまった。
新年のご挨拶気分で急遽スタツアした為か、到着したのは真夜中で、起きていたのはお迎えのコンラッドだけだった。

「では、俺もそろそろ寝ますね」
「うん。ごめんな?こんな夜中に。おやすみ、コンラッド」
「おやすみなさい、ユーリ」

部屋の前まで俺を送ってくれると、コンラッドは自分の部屋に戻っていった。
俺は音を立てないよう、慎重に扉を開けて部屋に入る。

「ぐぐぴ…ぐぐぴ…」

まさかの、というかやっぱり。
案の定、俺のベッドはヴォルフラムに占領されていた。

「うわっ、くっせー」

コイツ、酒飲みやがったな。
俺はヴォルフラムの体を軽く揺さぶる。

「起きろ、起きろって」
「…んにゃ」
「ヴォルフ〜!」

人のベッドのド真ん中で、大の字に眠る俺の婚約者は、天使のような寝顔で、ぐぐぴぐぐぴと男前な寝息を立てる。
あんまりにも気持ちよさそうに寝ているから起こすのが少しかわいそうになるけれど、俺の寝るスペースがないから仕方ながない。

「なあ起きろって、ヴォル…」

俺が呼びかけ続けると、ヴォルフラムは少し苦しげな表情になった。
そして、かすかに口元が動く。

「ユーリ…の声…」

俺の声に反応したらしい。
「俺だよ。起きろって…」
あと少しで起きそうだと思い、揺さぶりつつ顔を覗き込むと、「会い…たい」と消え入りそうな小さな声で、ヴォルフラムが呟いた。
地球と眞魔国では時間の進み方が違うのだ。
この長い時間、ヴォルフはどんな思いで過ごしていたのだろうか?

「ヴォルフラム……」

あんまりにも苦しそうにいうから、俺はちゃんとここにいるよ、そう伝えたくて。
どうすることもできない感情に襲われて、思わず寝ているヴォルフラムを抱きしめた。

「んにゃ…ん…?ゆ、ユーリ?!」
力が強すぎたのか、完全に目を覚ましたヴォルフラムはが「夢でも見ているのか?」と目をごしごしとこすりながら、「本物なのか?」と驚いたようにこちらを見つめた。
だけど、俺は構わず力を込める。

「い、いつ帰ってきたんだ?!く…苦しいぞ!」

驚きつつも嬉しそうなヴォルフラムの声に俺は、さらに胸の奥が締め付けられる。

「ヴォルフラム、ごめん」

いっぱい不安な思いをさせてしまった。
もっとはやく、こっちに来るべきだったと酷く後悔をした。

「ユーリ…何かあったのか?」

ヴォルフラムが不安げにこちらを見つめる。
自分の方がつらかったくせに。
それでも俺のことの方を心配してくれるヴォルフラムの優しいところが、やっぱり大好きだなって感じた。絶対に悲しませたくないと思った。
ヴォルフラムは事あるごとに、尻軽だの浮気者だというけれど、俺がこんな風に思える相手は、お前だけなんだよっていうこと、ヴォルフラムは分かっているのだろうか。

「……なんでもないよ、ただいま」

俺がそう言って笑うと、ヴォルフラムは顔を少し朱色に染めた。
そして、少し困ったように、怒ったように。
けれどやっぱり嬉しそうにヴォルフラムは頷くと、「おかえり」と天使のような笑顔を見せてくれたんだ。


end









眞魔国と地球の時間差が正確に知りたい件。 
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