たったひとつ



好き。
好き。

どうしようもなく、好き。

こんな気持ちは初めてで。
正直、戸惑ってるけど。


今がすっごく幸せで。

なんだか、時々無ちょっとだけ。
泣いてしまいそうになくらい苦しくなる。


―――


窓から光が差し込む。
俺は思わず目を細めた。

「……まだ、寝てるのか?」

ふいに愛しい君を見つめる。

(あ、まつ毛長い……)

しばらく見つめていると、ヴォルフラムは寝返りをうつ。
恐らくこれは狸寝入りだ。
俺の視線に気がついて、起きるに起きられず姿勢を変えたというところだろう。
発言だけはやけに積極的なくせに、実際は恥ずかしがり屋なんだよなコイツ。
そんなところも、可愛くて仕方ないんだけれど。
いくら見ていても飽きなくて、そのままじっとヴォルフラムを観察してしまう。
真っ白で透き通るような背中にある跡。
俺のものだっていう印。
なんだかそれが堪らなく愛しくて、俺はそっと口付けた。

「好きだよ?」

俺がそう呟くと寝ているはずのヴォルフラムは耳まで顔真っ赤に染めて、小さな声で言った。

「そういうことは、僕がおきている時に言え、このへなちょこ」

ああ。
なんでこんなに可愛いのかなあ?
こいつは、一体俺をどれだけ喜ばせれば気が済むのだろう。

「お前その顔、反則」
「へ?」

俺は驚くヴォルフラムをそっと抱きすくめる。

「お、おい?!ど、どうした?」

心の奥底から湧き上がってくるような、愛しいという感情。

「きょ、今日のお前はなんか変だ」

恥ずかしそうに俺から離れようとするヴォルフを逃がさないように手を掴み、もう一度引き寄せる。
俺が指先を絡めると、ヴォルフラムは戸惑いつつも、それに答えるようにギュッと握りかえしてくれる。
幸せだなあって、思わず笑みが溢れた。


「なあ、俺今すんごい幸せ」
「……ユーリ」
「やっぱさ、俺。お前がいないと駄目みたい」

ずっといつ言おうか迷っていた言葉を、この瞬間、どうしても伝えたくなった。

多分、俺にとってヴォルフラムは一生で一度しか巡り逢えない。
たったひとつの光なのだ。

「1年後、10年後、100年後。ずっと一緒にいたい、側にいたい、隣で歩いていきたい。そう思えるのは、お前だけなんだよ。ヴォルフラム」

俺の思いを聞いたヴォルフラムは、びっくりしたようにエメラルドグリーンの瞳を見開いた。
ヴォルフラムの思いはわかっているつもりだったけれど、それでもやっぱりドキドキしてしまう。
でも、逃げちゃだめだよな。

「結婚、してください」


俺達の婚約は、偶然だったかもしれないけれど、たしかにそれは恋になって、愛になった。


end
 
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