素直になれ!
(今日こそ、素直に)
花火大会〜郁side〜
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「郁、明日ある花火大会にはあるジンクスがあるそうですよ」
「……ジンクス?」
「はい。なんでも、あの花火大会を2人っきりで見られたら結ばれるとか、なんとか」
「聞いたことないな」
「ええ、僕もさっき噂を聞いたんですけど。どうです?丹羽君を誘ってみては」
「ば、馬鹿!!//」
なぜそこで丹羽が出てくる。
のんでいた紅茶をいったん机に置くと、臣を睨みつけた。
一方の臣はというと、ニコニコ楽しそうに笑っているし。
私は、別にジンクスとかそういうのを信じない。
だからこの話に興味はない。
はずなのに。
「どうして私は調べているんだ」
はぁ、と頭を抱える。
本当になにをやっているんだか。
「……調子が狂う」
そう呟いたその瞬間、後ろから聞き覚えのある声がした。
「よっ!」
「あっ、ああ!丹羽か」
私は慌ててパソコンの画面を閉じると、ニッコリ微笑んだ。
何をごまかす必要がある。
なんでこいつに見られたらまずいとか考えてるんだ!
「あれ。郁ちゃん、なんか慌ててない?」
「ま、まさか!そ、それより丹羽。何のようだ?」
話題をすり替えると
「あー、そうだった。郁ちゃん。今度の日曜暇?」
「にっ、日曜?!」
思わず勢いよく立ち上がると私は「ひ、暇だ!」と全力で頷いた。
「ならさ、俺とその……。夏祭りいかねぇ?」
まさかの丹羽からの申し出が嬉しくてたまらない。
嬉しくてたまらないのに「あっ、その。ま、まあたまにはそう言うのも悪くはない」なんてついそっぽを向いてしまう。
「あの、嫌なら別に無理にとは言わねえし。郁ちゃんが良ければなんだけど」
違う!
私は丹羽の方に向き直ると、今にも掴みかかりそうな勢いで叫んだ。
「嫌なんて言ってない!」
「お、おう」
戸惑ったように頷く丹羽をみて、私は少し安心したように胸を撫で下ろした。
しかし安心したのも束の間。
丹羽は閉じていたパソコンを指さし、言った。
「嬉しいけど、郁ちゃん。さっきあわててなにをかくしたんだ?」
普段鈍感のくせになんでこういうときだけ察しがいいんだこの男は!
「な?!な、何も隠してなどいない、別に夏祭りのサイトなんて見てな……に、丹羽。なぜ笑ってる!見てない、見てないんだからな!」
end
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