廊下の中心で




「あなたのせいですよ」
「あーん?何がだ」
「教室、戻れなくなっちゃったじゃないですか」
「じゃあ、今日はこのまま俺様んちに来るか」
「だから!そういう問題じゃっんぐ!?」

またやられた。
しかもこんな。
こんな廊下のど真ん中で!


「ああもうっ!なにやってるんですか!」


こう何度も何度も。
男同士のキスなんて本当に誰得なんだ。
ああ視線が痛い。
痛い。痛い。痛い。
終わった、俺の下剋上人生フィナーレだ。
退部して退学して他界するしかない。
俺がぎゅっと目を瞑ると跡部さんが俺の肩を抱いてまたもや言い放った。


「おい、お前らなんか文句あるか?」


本当にこの人は、常識がないのだろうか。
文句あるも何も。
そんなの普通に考えて……。


「「きゃああああああああ!」」


ほらやっぱり。
男同士なんて、ましてや天下の跡部さんとこんな俺の関係が認められるはず……。

「全然おっけーです!」
「むしろ美味しいです!!」

ありえな……い。
どういうことだ。

「ほら見ろ。大丈夫だったろ?」
「……あの……」
「だから今日は俺様の家に寄り……」
「俺、教室戻ります!」
「ちょ、ま!まて!若!」


俺は跡部さんから離れると、来た道を戻る。
そして、思いっきり教室のドアを開いた。


「日吉!おめでとう!」
「……は」
「心配してたんだよ」
「本当によかった!」
「ウス」

友人が俺を囲み、心底嬉しそうに笑う。

「お前、なんだかんだ跡部さん大好きだったもんなー」
「それも微笑ましいくらい純粋にな」
「ちょ、ちょっとまて。それってどういう……」


そう言いかけたその瞬間、クラスメイトの誰かが叫んだ。


「日吉、外!」
「?!」


ガタガタガタガタ


頭が真っ白になった。
目の前の光景を受け入れたくなくて固まる。


「若!来い!」


だってそうだろう?
ヘリコプターでやってきた跡部さんが、こっちに向かって手を伸ばしているだなんて。


「……幻覚が見えるらしい。保健室に……」
「お、おい待て若!」
「……はぁ」


どうしてこんな人が好きになってしまったのだろう。




「来い、若!だってお前は――……」
「……俺は?」
「俺様のモンだろ?」


ああ、本当に。
惚れた弱みかもしれない。





「本当に仕方ない人ですね!あなたは!」





飛び込んでやりますよ。
だって俺は。
あなたの物なんでしょう?




「うぉっ!あぶねえなぁ」
「どっちがです!っていうかさっきあなた廊下に居ましたよね?!」
「あーん?こうして迎えに来てやらないとお前。素直にならないだろうが」
「好きです、跡部さん」
「わ、か……」
「大好きです!」



顔を真っ赤にさせて慌てる跡部さんを横目に。
俺はそっと心の中でガッツポーズをする。
やられっぱなしは性に合わねえ。
下剋上だ。



「……」
「跡部、さん?」


様子がおかしい。
俺が俯いてしまった跡部さんの顔を覗き込むと……。


「おい、若」
「……はい?」


日吉若、2年。
氷帝時期部長候補が下剋上達成できる日は……。


「このままGo to bedするぞ」
「えっ!」


どうやら当分、やってきそうにもない。






end

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