アイアイガサ



雨の日の放課後、ユリウスとノエルは図書館にいた。
たまたま帰るタイミングが同じだったらしく、二人は今めずらしく一緒に廊下を歩いているのだった――……。


「じゃあ、ノエルはどうするの?」

ユリウスは心配そうに窓の外を見つめた。
この酷い雨の中、ノエルは傘を忘れたらしい。

「濡れて帰るしかないだろう!」
「駄目だよ、風邪ひく。いや、ノエルなら平気か……?」
「……ユリウス……まさか僕が“馬鹿”だといいたいのか?!」
「えっ、いや。そんなことないよ……多分。ていうかそれ、俺にでも解決できると思うよ」

そう言うと、あえて前半部分について否定しきらないユリウスは自分の傘をノエルに差し出した。

「はい、俺。濡れても平気だし」
「なっ!何をしている!!!そしたらお前が風邪をひいてしまうではないか!」
「……別に平気だよ?」
「駄目だ駄目だ!!お前が良くても僕が駄目だ!」
「……そっか……。そしたら……んー……」

眉間にしわを寄せて腕を組み、真剣に考えるユリウスに「もういい」と声をかけようとしたその瞬間。
ユリウスは突然とんでもないことを言い出した。

「じゃあ一緒に入ろっか?」
「ぬあああっ?!!!!」

ユリウスが天然ということは薄々感じていたが、まさかここまでとは……。
顔を少しひきつらせたノエルは思わず後ずさりをする。
何が悲しくて男と二人、あいあい傘をしなければならない。


「嫌?」
「い、嫌ではないが……」

変な噂が流れたらどうする!と叫びたいのはやまやまだった。
しかし、これがユリウスの善意というのははっきりわかるし……。
少し、気まずい沈黙が流れる。

「いや、やっぱ二人は嫌だよね。ノエル俺のこと嫌いだし、変なこといってごめ……」

「……いい」
「え?」
「一緒に……帰ろうユリウス」
「ノエル?」
「仕方なくだ!!仕方なくっ!はやく行くぞ」

ノエルはのどをならしそっぽを向くとズンズン歩きだす。
ユリウスがあわてて追いかけるとノエルは急に立ち止った。
やっぱり嫌なのかな?
そう思って顔を覗き込むとユリウスの想像とは違う、少し嬉しそうな照れたような顔をしていた。

「……ありがとな、ユリウス」
「え?」
「なんでもないっ!!ほら、いくぞ!!」




雨の日の夕暮れに、二人の背中と傘ひとつ。
寮までの短い距離だったけど2人にとってその時間はすごく穏やかでとても幸せに感じたのだった。





end




+++
因みにこのネタは知る人ぞ知る、某妖怪ドラマの相合傘シーンより!!
そういえば、ミルス・クレアって雨降らなかったような……。

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