Quelle belle




Trouble Maker 23





「わっ、うわっ………」


何度か感じたことのある、あの独特の浮遊感。
不覚にも、少なからず安心した自分に自分が一番驚いた。


………いや待て。


安堵どころかコレ、とんでもなく危険じゃないか。
不機嫌オーラ突き刺さってますけど。




「………何してくれるんだ、トラブルメーカー」
「うっ………」



否定できる材料がないのが無性に悔しい。
気がつけばがっちり腰をホールドされていた。

そして怖いんだ、その声と顔。



「………元凶私じゃないんですケド」
「ベポ、潜れ。海軍にまで来られちゃたまったもんじゃない」
「アイアイ!」



無視かい。

私どっちかっていうと被害者なんですが。
どこぞの方向音痴に拉致られただけなんですけど。


「そろそろ降ろし、痛っ………」


身をよじると、その瞬間彼の手にモロに当たった傷口。
彼女の脇腹から流れ落ちる血が、ぬるりと彼の手を濡らす。



「お前………!」


ローは驚いたように目を見開いたあと、凄まじい怒気を含んだ視線をこちらに向けた。



「早く言え、このバカが!!」


と怒鳴られたと思った次の瞬間には、能力で治療室へ移動していた。


憤懣そのままにベッドに叩きつけられるかと思ったが、
………さすがは医者と言うべきか、怪我人の扱いは心得てくれていたようで想像よりずっと優しい手付きで降ろされた。




「………麦わらの奴らか?」


何のことを言われているんだろうとばかりにぱちりと瞬く彼女に、ローは深いため息をついた。



「誰にやられた。……つか何してきた。何が楽しくて正義の門なんて行くんだ」


そんなに矢継ぎ早に質問されても困る。



「行きたくて行くわけないじゃない……。ウォーターセブンで鎌研いでもらったあと人が煙突に突き刺さってるの見つけちゃったの」
「………は?」


頭大丈夫かみたいな目で見ないでくれ。
私だって目疑ったわ。



「煙突壊して救出したはいいんだけど、迷子防止に強制連行。ニコ・ロビンって人が海軍に捕まって、牢入れられそうだったらしいの。戦力必要だったんだか問答無用でバカ早い列車に乗せられてそのまま乱入。頭痛かったわ」

「………そりゃこっちのセリフだ………」



敵の巣窟に真正面から乗り込むなんて余程のバカか大物しかやらない。
………麦わら屋はどっちだ。


前者ならいいが、後者だと後々厄介だ。

そうこう話しているうちにも、ローは手際よく彼女の怪我の処置を行う。



「………で、何かやらかしてきてないだろうな」
「やらかすって何を」
「賞金首になるような真似はしてねェよな、当たり前だが」

「二億のローじゃないんだからやってません。下っ端だけは倒してきたけど」
「………それ本当に下っ端か?」
「失礼な。嘘ついてません」

「……にしても一体全体何を使ったらこんな傷痕になるんだ……。刀でもねぇし、能力っぽくもねェな………」


「あぁ、コレ指」


「はぁっ!?」




包帯を巻いていた彼がガタンと立ち上がった。
危うく顎に頭突きを食らいそうになったセラフィナは反射的に仰け反る。


「………おい、ちょっと待て。誰と戦ってきたんだ」
「んー……名前何だっけ……フクロウとかなんとか」
「………それ、」
「あ、CP9?」


なんか誰かがそんなこと言ってたような気がする。
ナミだったっけか。

………何気なく口にしたつもりだったのだが、


ローは完全に動きを止め、珍しいことに口を開けたまま固まってしまった。




「………え、大丈夫?」
「………………」
「………ローさーん?」

「CP9!?」



彼は片手で顔を覆い、今までで一番重いため息をついた。


「………お前の懸賞金がどのくらいかかるか見ものだな………」


その声には驚くくらい覇気がない。
………じゃなくて。


「えっ!?懸賞金かかるの!?」


一人しか倒してきてないんですけど。
そんな目立つ真似してないんですけど。



「………いいか。お前は知らないだろうが、CP9ってェのは海軍のいわば暗殺部隊ってヤツだ。そこに入れるのは選りすぐりの精鋭だけだ」

「………え、にしては呆気なかったけど」
「それが問題だ………」


まだヒラの海兵が見ているだけだったらそこまで危険視されることもなかっただろう。
麦わらの一味の中に急に知らないのが増えたのかくらいで済んだかもしれないが、

だが。



「お膝元に大佐クラスの奴がいないわけがねェ。お前は晴れて危険因子だ」
「危険因子って………あ、そういや大佐一人斬った」


ローの愕然としている顔を二度も見られる日が来ようとは思っていなかった。

………この時は粗方ローの杞憂だと思ってた。疑わなかったよ、私は。















「ええええ!?!?セラフィナ!?!?」


翌日、シャチが新聞を握りしめたまま目を剥いて椅子から転げ落ちていた。
呆れたようなペンギンがその新聞をひったくってまた絶叫。
ベポも右にならえ。


「呼んだ?」


呑気な顔して出てきたセラフィナの目に止まったのは、




『 “死天使” セラフィナ 3000万ベリー』



「3000万スタートか……。華々しいな、セラフィナ」
「嘘でしょ───!?」


こっちの文字は読めなくても、数字は読めるんだな、良くも悪くも。


麦わらの一味も軒並み賞金が上がっていたり新しく懸けられたり。
ゾロたちが(図太くも)喜んでいた時、潜水艦の上では絶叫が響いていたとか。







( くくっ…… “死の外科医” に “死天使” か……。そのうち屍人キョンシー船とか呼ばれたりしてな)
(うわぁ……。幽霊船の方が響きいいとか何事……)




(笑えないから!笑ってる場合じゃないから!)
(セラフィナもそこじゃないから、ツッコミどころ!)
(でも天使って可愛いね)
(………まぁ……そりゃ的を得てるっつーか)
(だがしかし問題はそこじゃない)





*原作丸無視ですみません。。こういう作品なんです、ええ。
こういうのが乱発しますんでご注意あれ。


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