Quelle belle




Freedom  62





あの後、はっきり言えばあまり記憶はない。

ベビー5とバッファローの首と胴体を切り離して、ボートに浮かべ、ドフラミンゴを釣るために海に流したことだけは身に覚えがある。


………ここで、俺が迷ってどうする。


セラフィナは、絶対に戻ってくる。
信じてやれなくてどうする。


今回ばかりは、賑やかな麦わら屋たちに救われたかもしれねェ。
うるさいくらい明るい奴らは、俺が四皇を敵に回すという作戦を説明してもあまり動揺しなかった。

ナミ屋と鼻屋、タヌキ屋は怖がってはいたものの麦わら屋の決定ならと何だかんだ受け入れていた節がある。

奴らは信じられないほど自由奔放だが、そのペースに知らない間に乗せられている俺も大概だ。





彼がそんな物思いに耽っている間にも、ドフラミンゴが餌に引っかかったようで電伝虫が鳴った。
相変わらず胸糞悪ィ声には嫌悪感しか感じないが、奴の焦ったような雰囲気を察して思わずほくそ笑んだ。


シーザーを返す条件として出してやったのは、


“七武海の脱退”。


四皇のカイドウ相手に人工悪魔の実を売りつける奴にとって、七武海という称号は最高の隠れ蓑だったろう。
究極の選択?

そうでもねェ。
奴の選択肢なんて、ハナから決まってる。


………その翌日、俺の予想通り朝刊で奴の王下七武海脱退が報じられた。
どこから漏れたのか、俺と麦わら屋の同盟、ユースタス屋たちが結んだらしい同盟の情報もあったが。



『俺だ……七武海をやめたぞ…』


電伝虫の向こうから聞こえた奴の声からは、昨日のような焦りは感じられなかった。
俺が口を開こうとした時、


「もしもし!おれはモンキー・D・ルフィ!海賊王になる男だ!」
「お前黙ってろって言ったろ!」


すぱこーん。

鼻屋の小気味いいツッコミが入ったが、当の麦わら屋はお構いなしに俺から受話器を奪っちゃァ勝手にまくし立て始めた。


「おいミンゴ!茶ひげや子供たちをひでぇ目に合わせてたアホシーザーのボスはお前か?!シーザーは約束だから返すけどな!!今度また同じようなことしやがったら今度はお前もブッ飛ばすからな!」

『フッフッフ……麦わらのルフィ…兄の死から2年…ぱったりと姿を消し、どこで何をしてた……』

「!!……それは絶対に言えねェことになってんだ!」

『俺はお前に会いたかったんだ…。お前が喉から手が出るほど欲しがるものを俺は今…持っている……』



欲しいもの………?

途端に目を肉にして、目の前を飛び交っているらしい肉を数えだす麦わら屋から受話器を奪い返した。



「麦わら屋!奴のペースにのるな!」

未だ不気味に笑い続ける奴に、怒鳴るように言う。


「ジョーカー!余計な話をするな!約束通り、シーザーは引き渡す」
『そりゃあそのほうが身のためだ。ここへ来てトンズラでもすりゃあ、今度こそどういう目にあうか…お前はよく分かっている……』
「………」
『フッフッフッ……まずはウチの大事なビジネスパートナーの無事を確認させてくれ』


受話器をシーザーの方へ向けてやれば、奴は凄い勢いで受話器に向かってきた。


「ジョーカー!すまねェ!おれのためにアンタ七武……」
「今から8時間後、ドレスローザの北の孤島、グリーンビット南東のビーチだ!」


涙やら鼻水やらを垂らして、凄い勢いで食いついてきたシーザーの声を遮った。


「午後3時にシーザーをそこへ投げ出す。勝手に拾え。それ以上の接触はしない」
『フッフッフッ…。寂しいねェ。成長したお前と一杯くらい……』

「切れー!こんなもん!」



今度は麦わら屋に無理矢理電話を切られた。
まぁなんとも忙しい(騒がしい)一味だ。


「待て。相手の人数指定をしてねェぞ。相手が一味全員連れて来たらどうすんだよ」
「いや、それでも構わねェ」
「?」
「すでにこの作戦においてシーザーの引き渡しは囮のようなもんだ」


目標は、工場の破壊。
それさえ出来れば、カイドウ側から奴は消される。

………たとえ、俺らが奴に敵わなかったとしても。

だがそれはあくまでも最悪の事態だ。



この手で奴を討ち取る意思に違いはない。



(………セラフィナ、お前はどこにいる………?)


どこにいてもいい。
………ただ、早く戻ってこい。




アイツの存在が、どれほど俺に安心を与えていたか、

嫌という程実感したのは、麦わら屋の船の上だった。















「うおおお!!着いたぞ!ドレスローザ!」


大声で叫ぶルフィに、冷や汗を流したウソップが後頭部を叩く。


「馬鹿!大声出すなよ!ドフラミンゴに聞こえちまう!」
「聞こえるか」


ゾロがそれにツッコむのもいつもの光景らしい。

………全く、コントみたいな一味だ。
緊張感って言葉はお前らの中にねェのか。ねェだろうな、聞いた俺がバカだった。


かくして、一行はドレスローザに上陸したのだった。



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