「好きです」

「残念。私は嫌いです」


目の前の彼を見るとどうも溜め息が出てきてしまう。
今日は何回目だっけ?そういえば昨日とは違う場所。今日はどっから付いてきたのだろう。


「勿論、朝早くから名前様がお家を出られるのを今か今かと待ち構えておりました」

「何で家まで知ってるんですか!?ていうか家からずっと後付けてきたんですか!?怖いんですけど!いい加減訴えますよ!」

「怒った名前様眩しすぎでございまし」

「誰かこの人捕まえて下さい」


1ヵ月程前に転勤でやってきたイッシュ地方。イッシュでも有名なバトルサブウェイに勤める事に心踊っていた私だが、それが悪夢への入口だったのだ。
イケメンかつ優秀だと聞いていた筈のサブウェイマスターはただの変態だった。
勤務初日から「一目惚れ…してしまいました」と黒い車掌に告白され、「新しい玩具!」と何故か白い車掌から卑猥なアダルトグッツを押しつけられたりと災難だった。

それだけならまだ良かったのだが、なかなか黒い車掌ノボリさんは諦めてはくれずこうやって毎日のように告白して来る。(ちなみに白い車掌のクダリさんは遊び人なので3日で飽きてくれた)


「名前様が好きすぎてわたくし、息を吸うのも辛いのです」

「じゃ、しないで良いですよ。そうしてずっと眠ってて下さい」

「眠りについたら名前様がキスで起こして下さるのですよね?分かります」

「しねーよ!どこの棘の城に閉じ込められた眠り姫だよ!」

「名前様のツッコミ、今日もとても冴えてらっしゃいますね。わたくし、そのまま名前様に突っ込んで合体したいです…。」

「…本当に訴えますからね」


朝から下ネタ言ってくる上司なんて多分このバトルサブウェイだけですよ!?
まだ早朝のホームにはあまり人がおらず、かえってノボリさんとのこのやり取りは目立ってしまっていた。恥ずかしいのレベルを越えてる……


「名前様、名前様」

「…何ですか?」

「今日のパンツは何色でしょうか」

「ジュンサーさーん!こっちです!ここに変態がいます」

「ハッ!名前様まさかジュンサーさんの制服でコスプレイ!?」

「しねぇよ!そしてパンツの色も教えませんから!」


ガミガミとノボリさんを少し強めに怒ると、彼は一気にしょぼくれた。
急に黙り込んで悲しそうな顔を此方に向ける。

「そうですよね……わたくし、迷惑でしたよね」


いつもの冗談の雰囲気ではなくノボリさんは真剣だった。ノボリさんが悲しそうに呟くのを見つめて少しだけ後悔した。なんか…言い過ぎたかな…

「出来れば最後の手土産に名前様のパンツ(使用済み)が欲しいです。」

「分かりましたよ。しょうがないです……って!は!?パンツ!?はああああああ?」」

「え、宜しいんですか!では遠慮なく頂きます……」

「ちょ、や、め!!イヤアアアア!何スカートに手入れ…ちょっ、誰か助けてええええ!」












「あー今日もやってるやってる」

「クダリさん、止めないんですか」

「大丈夫だよ。あれノボリの一方的な片思いに見えるけど案外そうでもないから」

「え…それってどういう…」

「さぁね!さー今日も頑張ろ!ほらカズマサ行くよ」

「ちょ、クダリさん!教えて下さいよ」


今日もバトルサブウェイの1日が始まります。




煌華様リクエスト




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