「あれ名前っちどこ行くんスか」
「図書室に本を返してくる。そんで図書室で寝る」
「えっお昼ご飯どうするんスか!まだなんじゃ…」
「4限で食べ終わった!5限目までに帰って来なかったら上手く誤魔化しといてね、シクヨロ」
「ちょ、名前っちーー!?」

借りていた小説5冊ももう読み終わっちゃたし、返すついでに小説読みながら寝よう。昼休みの図書館は案外人少なかったりするので眠るのには最高すぎる…しかもクーラーもガンガンついてるしサボるのには最適なんだよね!たまに図書委員をしてる黒子くんとバッタリ遭遇して無理矢理追い出されるんだけど…
駆け足で図書館へ向かい扉を開ける。案の定室内は静まり返っており人気がない。

「今日はいつも以上に人が居ないな…私ってばツイてるぅ!」

事前に保健室から調達した枕と茶菓子は隠して置いてある。漫画も持ってきた…完璧だ!!図書委員も昼休み前には役職を果たし今はお昼中だろう。そして今日、黒子くんは担当の日じゃ無かったはず。か、完璧すぎる!!
適当に借りていた小説の返却を済ませ、新たに数冊本を取る。自分の鞄の中から漫画を出してカウンターの近くに隠しておいた茶菓子と枕を持ち畳があるスペースへと寝転んだ。ああ…なんだろう…全てが上手くいきすぎて涙が出そう。わたし多分いまこの世で一番幸せ!!

「おい」
「……………え」
「図書室で菓子を食うな。それとその枕はなんだ、お前何しに図書室に来ているのだよ。あと、漫画は学校へ持ち込み禁止なのだよ」

ナノダヨ?ナノだよ?
私の幸せだった空間がガラガラと音をたてるように一気に地獄へと変わっていった。なっなんだよこの眼鏡!!しかもこいつデカァ!!いや紫原を知ってから大抵の人はビビらなくなったけどコイツもデカいわ。そんなに上から見下げてこないでよ眼鏡くん名前困っちゃう

「え、えーと誰?図書委員の人?」
「違う。お前こそ誰だ、ここは本を読んだり勉強する場所であって寝たり茶菓子を食べる所ではないのだよ!!」
「……ス、スイマセン」
「フン、目障りだ早く片付けて帰れ」
「えーー!嫌ですよ!私が先に来たんですから私の好きにさせて下さいよ!!茶菓子あげますから大人しく見逃して下さい」
「おッ俺は子供ではないのだよ!!ふざけるな!!」
「じゃあどうやったら見逃してくれるんですか!!あッ一緒に寝ます?眼鏡くんも一緒に昼寝しましょうよ」
「なッ…!いっ一緒に寝るだと!?そういうのは大人になってからするべきなのだよ!!」

眼鏡くんは顔を赤くしながら手早く眼鏡を押し上げる。眼鏡くん絶対寝るの意味を履き違えてるよ…いや履き違えて無かったとしても大人になってからってどんだけ純粋な心の持ち主だよ。童貞か

「ごめん眼鏡くん私本当に眠た…じゃなくてえっーと凄く気分悪くて死にそうだから見逃して」
「茶菓子や漫画を用意していながらなにを言っているのだよ。あと俺は眼鏡くんではない。緑間真太郎という立派な名前があるのだよ」
「ふーん緑間くん…じゃあよろしく緑間!」
「馴れ合うつもりは無い…時にお前星座は何座だ」
「は?星座?ふたご座だけど」
「やはり…本当におはあさの占いはよく当たるのだよ」

緑間はなにやら一人でブツブツ言ってる。占いだなんて結構乙女だな!あんなにデカい図体して…でも綺麗な顔してるなぁ肌も凄く白いしなにより睫毛長すぎだろ女か!身長高いしスポーツとかやってるのかな…よく見れば指にテーピングしてるし。てか胸ポケットについてるそのウサギのピンバッチはなんだ

「…緑間って女みたいだねぇ、まさかオカマさんとか?」
「ふざけるな!どこをどう見たらそうなるのだよ!!」
「いや綺麗な顔だしその胸ポケットのピンバッチ…」
「ああ…これは今日の俺のラッキーアイテムだ。俺の蟹座は今日の占い一位だった。だが今日はふたご座の奴と関わると災難ありと言っていたのだよ。本当によく当たる占いだな」

今この状況が災難だと言いたいわけね…良い度胸してやがるぜ緑間くんよぉ!!ああ…本当はこんな事してる場合じゃないのだよ。刻々と時間は過ぎて私の睡眠時間がなくなるのだよ緑間くん

「緑間、私寝たいんだよ!先生にチクってもいいから寝かせておくれ…あ、だけど黒子って人にはチクらないでね!後でナニされるか分からないから!」
「…お前黒子の知り合いなのか」
「え?まぁ幼なじみだし。緑間も知ってるの?」
「ああ同じ部活だ」
「……………ハイ?」
「だから同じ部活だ!黒子とは同じバスケ部なのだよ」

オーウとうとう自分の耳さえイカレちゃったかな…今緑間なんて言ったんだっけ?黒子くんと同じ部活?ババババスケ部?同じバスケ部?

「嘘ダアアアアア!!」
「本当なのだよ」
「え、なに、緑間ってバスケ部!?バスケ部?なんでバスケ部!?イヤアアア!!」
「なんなのだよ…お前…」
「………遅れたけどわたし苗字名前以後お見知りおきを」
「あ、ああよろしく」


緑間は何も分からないような顔していたけれど…分かるよ放課後になれば分かるよ緑間。赤チン以外の最後の1人はきっと緑間だ。どうしようバスケ部全然まともな人が居ないよ…どうか赤チンだけは!赤チンだけは一番まともでありますように…!
結局私は悩みすぎて一睡も出来ず午後の授業にもキチンと参加した。



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