バスケは小学校1年生の時に始めた。それから小学校6年生の夏まで続けたがある些細なきっかけで私はバスケから離れることになった。


私が入学した帝光中学はバスケの名門校と言われる程の実績を持っている。
そんなバスケ部のマネージャーが私になんて務まるはずがない


「さつきは何で私なんかに頼んだんだろう…」


六限目が終わり、いつもならば夕方の再放送ドラマを見るべく家への帰宅を急ぐのだが、そうはいかない。
さつきと約束してしまった以上それを破る訳にもいかずトボトボとバスケ部が練習している体育館へと歩く。


「珍しいですね、今日は真っ直ぐ家に帰らないんですか?」
「おうふ!!!」
「…ちょっと、気持ち悪い声で驚かないで下さい」
「だ、おまっ、黒子くんが驚かすから…「はい?」…何でもないです」


後ろから急に声を掛けられ、危うく転ぶ所だった。声の主は影薄少年の黒子くんだ。
彼は私の幼なじみに当たる人物だが、名前のように心まで黒い極悪非道な人間だ。今だってあの何も言わせない感じの威圧感…


「どうしたんですか?今日はいつも見てる再放送ドラマの最終回だって言ってませんでしたか?こっちは体育館へ行く道ですけど。ああ、分かりました。僕が練習する所を見に来たんですね、そうなんですね」
「違うよ!ていうか何で私が再放送ドラマ見てる事知ってんの!?黒子くんに言ってないじゃん」
「名前さんと僕は以心伝心なので」
「…………」
「今、(うわぁ…何コイツきも)って思いましたね?」
「お、思ってません!!」


黒子くんが言った事が図星すぎてちょっとまじ黒子くんヤバいと思った。まさか最近になって心まで読めるようになっていたなんて。
そのまま黒子くんにより通せんぼをくらってしまった私は何とかして体育館へ向かいたいのだがどうにもこの大魔王を倒すまで体育館への道は通れない。……これなんてRPGだよ


「黒子くん…私今日体育館に用事があるんだ」
「そうなんですか」
「……通して欲しいなって」
「どうせバスケ部に行くんでしょう?なら僕が連れて行ってあげますよ」
「えっちょ、な、なんで知ってんの!?」


黒子くんから出た意外な言葉に驚きを隠せないでいると、黒子くんは鞄の中から一枚の紙切れを出しした。
桃井さんが入部届持っていたので誰のか聞いたら簡単に教えてくれました。と黒子くんの手に握られていたのは私が先程書いた入部届であった。
さつきに渡したのになんで黒子くんが持ってんだよ。さつきなんでこんな人に渡しちゃうんだよ……!


「それに、赤司君からも君を連れて来るように頼まれました」
「……赤司って誰」
「……きっと君の良いご主人様になってくれると思いますよ」
「ご主人?え、何て」
「会ってからのお楽しみです」
「いまボソッとなんか呟いたでしょ!?なに?ご主人って誰!?」
「ほら行きますよ」


ぐい、と首の根っ子を掴まれ強制的に体育館への方へと引きずられる。
苦しい…痛い、痛いよ黒子くん!何でそんなに笑顔なの!?

「……名前さん飼いたい」
…私は何も聞いてないよ



- ナノ -