やばい。苗字名前、人生最大のピンチかもしれない。
目の前で私を見下ろす男は意味深な発言を残した。飼い主になる?ご主人様?やばいよ、私の身も危ないけどコイツの頭も危ないよ。

「あの…もしかして赤司くんてパン屋の赤チンですか?」
「は?パン屋?」
「いや、あの前に紫原からメロンパン貰った時に赤チンから貰ったって言ったから…」

すると赤司は、ああ!とようやく事の事情を思い出したらしい。君があのパンを食べたのか、と含み笑いを浮かべた

「あれは確かに僕が敦にあげたが僕が作っているわけではないよ。僕が通っている店で買ったんだ」
「あ、そうなんすか…」
「しかしあのパンには少量の毒薬を含んで居たのによく死ななかったね」
「しっ、死!?毒薬!?なっなにしてんすかアンタ!!」
「ふふ、嘘だよ。名前は面白いな」

クスクスと笑う赤司…くん。コイツ腹立つけど下手に暴れたり文句言ったりするとヤバそうだから何も言えない。すると赤司は持っていた笛を吹き集合をかけた。え、いや、ちょっと私の周りに集めないでよ!!恥ずかしいじゃんかよ!!

「みんなに紹介する。彼女は今日からバスケ部の犬になる名前だ」
「はぁ!?ちッ…違います!犬じゃありません!」
「但し彼女を犬として扱っていいのは僕とレギュラーのみだ」
「シカトですか!?ねぇシカト!?」

私の言葉を無視し赤司くんは淡々と語る。他の一軍さん達からの哀れみの視線が突き刺さる。私…もう…お嫁に行けない。

「名前さんを…犬に…!主従プレイ…!」
「おい赤司!それって名前の胸は揉み放題って事だな?」
「名前っちを自由にしちゃっていいんスか?」
「フン…下僕として扱ってやらんこともない」
「名前ちん、まいう棒買ってよ〜」

オイこら前半約四名。私をなんだと思ってんだ貴様等。他の部員はマネージャーとして彼に接してやれ、と言い赤司は部員達を解散させた。
赤司は気分良さそうに、えらく似合わない笑顔を振りまきながら私を見つめる。な、なんだよコノヤロウ

「名前にプレゼントがあるんだ。バスケ部へと入ってくれた記念にね」
「えッ!プレゼント!?やった!」

ちょっとぉ!赤司くんてば中々良い奴なのかもしれないわぁ…さっきの犬呼ばわりもプレゼントで許してやろうではないか!よくよく見れば綺麗な顔してるし口調も朗らかだし、やっぱ良い人なのかも!ふふっやっとバスケ部のまともな人に会えたよ、まったく。あープレゼント何かなぁ…お菓子かなぁ!それともパンかなぁ!いやもしかしたら高級料亭とかの食事券かも!!

「…………………」
「はい、出来上がり」
「………ナンデスカ、コレ」
「何って首輪だよ名前専用の。因みにほらリードも着いてるんだ、便利だろう?」
「いや便利さとか求めて無いし!何なのコレ!!もう人として扱って貰えない感じですか!?そうなんですか!!」
「黙れ」

先程とは違う少し低めの声色で赤司は言った。さっきまでの朗らかな対応と明るい声は何処いった!!ついに本性を表しやがったな赤司征十郎…!ていうかさっきと変わらない笑顔のままそんな低い声出されたら余計怖いんだけど!!に、睨まないで下さい死んでしまいます。

「黙って僕の言うことを聞け。言うことを聞かない犬は嫌いなんだ」
「…………ウィッス」
「名前、バスケ部では僕の言うことは絶対だ。僕に従わなければその時は其れ相応の罰を受けて貰う」
「ば、罰とは……?」
「そうだね、例えば君の処女を僕が貰う、とか」
「!!!!」

頭の中で何かが爆発した。それと同時に身体が、赤司征十郎だけには逆らってはいけないという注意報を発動した。そのおかげで私は奴の目の前から一歩も動けない。動かない。
もしここで逃げたしてしまったら私の貞操が危ない!奴に…赤司征十郎に私の純粋な心と身体が奪われてしまう!!

「名前、今一度君を歓迎するよ」

握手の変わりに、首輪を付けられた。なんかネームプレートまであるよ…ご丁寧にリードまで付けてくれちゃってよぉ…私そっちの趣味は無いんだよ。赤司くんって絶対AVとかSM見てそうだよね。

「僕はそんな汚いものは見ない」
「勝手に心を読まないで下さいよ!!うぐっ…」
「さぁ、名前。これから毎日楽しい日々が始まるね」
「……う、ウィッス」
「僕の言うことは?」
「ぜ、ぜった〜い!」

前言撤回。優しくとも何ともない。赤司征十郎は一番敵に回しては行けない人物だ。
やっぱりこのバスケ部にまともな人は1人も居なかった。



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