「はーっ、やっと終わったっスね!名前っち〜早く部活行こうよ」
「……イキタクナイ」

六限の終わりを告げる鐘が鳴り周りは急いで帰りの仕度やら部活に行く準備を始める。
あ〜あ私もついこないだまでは六限が終わったら真っ先に帰る準備してさっさと帰宅してたのになぁ…。今日から本格的に練習始まるみたいだし嫌だなぁ…動きたくないなぁ…寝たい

「名前っち〜早く行こうよ〜赤司っち怒っちゃうっスよ!」
「動きたくない動けない寝たいテレビ見たい」
「なにニートみたいな事言ってるんスか!!…こうなったら紫原っち出動っス!」
「あいあいさ〜」
「ギャアアアアア!!紫原テメエ!高い!高い!」

紫原に持ち上げられ半ば強制的に机から離れる。最近体重増えて気になってるんだから持ち抱えるなんて止めてくれ!とんだ羞恥プレイじゃないか!しかもなんで米担ぎみたいな体制なの!?もっとこうメルヘンチックにお姫様抱っことかお前の頭には無いのか!!

「紫原おろしっ…」
「アラ〜名前ちん最近太った?なんかいつもよりちょっとだけ重たい」
「ちょ、紫原っちヤメテ!ヤメテあげて!名前っちのライフはもう0っス!」
「……わかってるよ!!デブだよ私は!!今から痩せてやるよ!!痩せればいいんだろ!!」

結局担がれたまま体育館へと運ばれた。み、みんなの視線が痛い…私は平凡系女子代表なのに…これだから目立つ連中は嫌いなのよ!!と心の中で訴えながら、その一方で今日からダイエットするんだと心に誓った。


「で、この状況は何ですか虐めですか」
「ごめんね〜名前。赤司くんがどうしても捕まえとけって言うから」
「酷いよさつき!!」

体育館に着いて早々に2メートル近くの男等に囲まれて、私が恐怖に震えているその間にさつきに縄で縛られて…ってこれどんなプレイっすか

「みんなして私をいじめて…訴えてやる!」
「…名前、縄で縛っても胸が強調されないなんて…お前本当にぺったんこだな…さつきに分けてもらえよ」
「ちょっと青峰君、名前さんに本音言っちゃ失礼ですよ。確かに名前さんはぺったんこのまな板です。だけどそれが愛おしいんですよ…今だってホラ縄に縛られて興奮してる名前さんを見ると、もう…」
「ヤメロ!興奮なんてしてないからね!?」

私の周りを囲む二人は私の胸を見つめご愁傷様と手を合わせる。そしてそのまま私を見てみぬフリして置いて行きやがった。殴る、いつか絶対殴ってやる。さつきもドリンク作ると行ってどっか行っちゃったし誰か助けてくれないかなぁ…

「あッ!緑間!…くん?」
「まさかバスケ部に入部希望だっとはな」
「…希望はしてないんだけどね、それよりこの縄を解いておくれよ!」
「無理だ」
「即答っ!!もう少し位悩めよ!目の前の幼気な少女を救えよオオ!!」
「フン…お前のような下僕の言うことは聞かないのだよ」
「ハアアア!?げっ、下僕!?誰がいつどこでアンタの下僕になったのよ!」
「決まっているのだよ、今決めた」
「こんの天然眼鏡ちゃんがよオオオオオ!!」

わあわあ喚いても縄は解けないし、またしても緑間は私を見捨てて行くし…!!絶対赤司って奴の仕業だろコレ。赤司って誰なのよ、本当!パン屋じゃ無いのかよ赤司くん。
体育館へと誰かが入ってくる音がすると、ウォーミングアップや自由に練習していた人達が一斉に全員立ち上がり、一気に体育館内は沈黙の空気へと包まれた。バッシュが床をかする音が聞こえると皆一斉に挨拶をした。

「お疲れ様です、キャプテン!!」
「…キャプテン?」
周りを通り抜け足音が此方へと近づいてくる。生憎私は今、意味もなく縄に縛られている哀れな少女だが見方を変えれば痴女に勘違いされてしまう可能性もある…な、なんとして痴女だけは避けたいわ。高校生活はまだ1年とちょっとあるのにアダ名が痴女に変更されても困る。ええい!問いただされる前に答えてしまえばいいんだ!!

「…こっこんにちは!良い天気ですね〜ッじゃなくて!えっと、あの、この縄は趣味とかじゃなくて…あのっ」
「苗字名前だね?」
「えッ…!なんで名前を…」
「ようこそバスケ部へ」

目の前に立つ彼は真っ赤な髪を揺らし、腕組みしながら私を見下ろした。鋭い眼孔に嫌な予感がひしひしと身体へと伝わってきた。私の勘が当たるのなら多分コイツは…

「バスケ部キャプテンの赤司征十郎だ。今日から君の飼い主になるご主人様だよ」

どうしよう、今日の勘は冴えすぎている。



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