インゴさんから大胆な犬にしてやる宣言と私のセカンドキスを奪われて翌日、とりあえずギアステの空気は悪いです。
「ちょっと待ってよ名前!セカンドキスってファーストキスは誰だったの!?」
「私の可愛いランクルスちゃんです」
「それ、キスって言わない!」
誰も来ないうちにと思って自作の"今日のギアステ日記"をつけていたらクダリさんが面白そうに日記覗いてきた。
ていうかクダリさん今日は朝早いですね。
「うん!今日は名前の為に早く来た!」
「…私ですか?」
「インゴに襲われないように!名前は僕が守ってあげるから!」
「くっ…クダリさああああああん!」
ああまさにギアステに舞い降りた天使!にぱって笑って、キラキラした瞳で私を見つめてくるクダリさんはまさに天使!可愛い!
「だって名前の処女膜を最初に破るのは僕!」
いまのは聞こえなかった事にしておこう…。幻聴、幻聴。天使はあんな卑猥な事言わないもんね!
「僕、えっちだよ名前!」
「心を読まないで下さいいい!!」
自らを変態と認めたクダリさん。手をワキワキしながらこっちに来ないで下さい!!
「名前、僕に名前のハジメテ頂戴?」
「い、いやいやいや断固反対です!!」
じりじり近づいてくるクダリさんから逃げてたら急にドアが開いた。
「名前オッハヨー!げっ!なんでクダリまで居るわけー」
入って来たのは昨日から日本のギアステに研修に来ているドSインゴさんとタラシエメットさん。
ドアを開けて先にエメットさんが入って来た…までは良かった。ここまでは。次の瞬間後ろにいたインゴさんが明らかに機嫌が悪いどす黒いオーラを放ちドアをバァンと勢い良く閉めた。
「イ、インゴ?」
エメットさんが驚いて恐る恐るインゴさんに顔を近づけ、大丈夫かと尋ねるとインゴさんの長く細い脚がエメットさんの腹部にクリーンヒットした。
「ギャッ!」
「邪魔です。この愚弟が」
「き、機嫌悪いからってボクに当たらないでよ…うぅ」
情けない声をあげてエメットさんは床に倒れた。インゴさんから蹴られた場所を押さえながら苦しそうに膝をついていた。あまりにもエメットさんが不憫すぎる…
「インゴ大丈夫?なんで怒ってるの?」
私の隣にいるクダリさんは怖がる様子なくケロリといつもの調子でインゴさんに問いかけた。…なんて勇者なんだクダリさん
ギロッ
「…ひぃっ!」
クダリさんの問いかけに振り返ったインゴさんの鋭い眼光が私を突き刺す。
細くつり上がった綺麗な青色の瞳が真っ直ぐに私を見つめてきて…いや、睨んできて私の身体は金縛りにあってるかのように一瞬にして固まってしまった。
「(こ、怖い…インゴさん怖い…)」
じっと目を逸らさずに私を睨んでくる。怖くて耐えきれなくなった私はなるべくインゴさんに目を合わせないよう必死に逸らした。
カツカツと革靴が床を踏む良い音がドンドンと近づいてくる。ま、間違い無い…インゴさんが近づいて来てる。このままいくと間違いなく死亡フラグ。
怖くて隣いたクダリさんが着ているコートの裾を小さく握った。するとクダリさんは一瞬だけ驚いた顔して、私に小さく「大丈夫だよ」と言うと頭を撫でてくれた。
「…クダリ様」
「なぁに?」
「その犬はワタクシの物でございます。返してくださいまし。」
「名前、犬でも物でもない」「…く、クダリさん」
クダリさんは私を守るようにしてインゴさんの前へと立ちふさがってくれている。守って…くれてる?
一方のインゴさんは相当機嫌は悪いようでクダリさんと私を一瞥すると入ってきた時のようにドアを物凄い勢いで閉めて出て行ってしまった。
「…インゴったら本当に独占欲強すぎ!」
ね、名前?とクダリさんに言われたが何に対しての独占欲が強いのか分からなかった。
するとクダリさんは小さく溜め息をつくと、自分のポケットから小銭を出し私に渡してきた。
「インゴ、コーヒーはブラックしか飲まない」
「………は」
「名前がインゴの機嫌直してきて!ていうか名前しか無理だから!」
クダリは天使のようなスマイルで悪魔のような試練を私に残していきました。
掌にのった小銭…120円を見つめると溜め息が止まらなかった。