「つ、疲れた……」

あれからの案内はそれはもう地獄のようなものだった。
インゴさんのキャリーバックを引きずりながら駅内を案内してたら、「ワタクシ駅の事は知ってますので」とか言われてインゴさんはどっか行っちゃうし、エメットさんは目を離せばすぐに女性のお客様にナンパするし…。

とにかくまあ大変だった。荷物だけでも置こうと執務室に入ったら2人共先に着いていたらしく堂々とソファーに座っていた。先に着くんだったら自分のキャリーバック位持って行けよインゴさん。

後から聞いた事だが2人は前から何回かここには来ていたらしく、場所も把握済みらしい。…おいノボリさん聞いてないぞ。
日本語ペラペラなのも何回も遊びに来ているかららしい。…聞いてないぞノボリさん。

「お、お待たせしました。どうぞ」

「わぁい!ありがとう!名前」

用意していたお茶とケーキを出したらエメットさんは物凄く喜んでくれた…のだが、

「イ、インゴさんは甘いの嫌いなんですか?」

ケーキを出した途端物凄く睨まれたので恐る恐る聞いてみる。

「ええ、嫌いです」

そんな直球に…。

「す、すいません。何なら食べれま「たっだいまー!」

「おや…インゴ様、エメット様お久しぶりでございます」

「ああー!エメットケーキ食べてる!いいなー僕にも頂戴!」

勢い良くドアが開いてノボリさんとクダリさんが帰ってきた。
よ、良かったあああああ!このままこの2人と居たら胃が千切れそうだったよ!

「名前、お疲れ様でした。貴女のお陰で助かりました。ありがとうございます。」

「名前エメットに何もされなかった?妊娠とかしてない?」

ノボリさんに頭を撫でられ、クダリさんからは後ろから苦しい位に抱きつかれた。少しだけホッとした。しかしクダリさん後半の妊娠を詳しく教えて下さい…。

「ノボリ様もクダリ様も無能な部下を持ったものですね」

和んでいた空気はインゴさんの冷たい一言によって一気に冷めてしまった。…無能な部下って間違いなく私。

「…いえ、そのような事は」

「荷物もろくに持てず満足する茶を出すことも出来ない。…ハァ何故お前のような者がここで働けるのか知りたいものです」

心臓がえぐり取られるような感覚だ。怖いのか憎いのか分からない。ただ手足の震えは止まないし、目の前はぼやけてきて見えにくい…
こんな罵声を浴びせられたのは初めてで、でも私が悪いのであって…

「ノボリ様もクダリ様も躾が足りないのでは?こんな部下が居るのであれば上に立つ者として恥ずかしいですよ」


私の中で何かが切れた。そう思ったらインゴさんの白い頬にビンタしていた。

「…っ!」

「あ、貴方に何が分かるんですか!の、ノボリさんもクダリさんも変態だけど凄くいい上司なんです!わ…私が嫌いなら、私だけに言えばいいじゃないですかあ!」

やってしまった。
上司…になる人に手をあげてしまった。泣きながら言ったから顔はぐしゃぐしゃだし…ノボリさんやクダリさん、エメットさんは唖然としたように驚いている。
…とうとうクビかぁ。お父さんお母さんごめんなさい。実家で暫くお世話になります…。

「…ふ、ハハハハ!」

「…!!」

私のビンタを食らったインゴさんが急に笑いだした。こ、これはもう死亡フラグとしか…

「名前と言いましたか?」

「ひあっ!」

腕を引かれインゴさんとの距離が縮まった。インゴさんの顔が目の前にある…笑ってるインゴさんまじ怖いっす

「ワタクシ、お前のような女初めて見ました…。お前の事気に入りました」

「…は、はぁ」

「だからお前をワタクシが躾てやります。」

「…はぁ!?」

「今日からお前はワタクシだけの犬です。…分かりましたか名前?」


インゴさんは言いたい事だけ言うと、ガブリ…唇を奪いやがった。

「お前はワタクシのモノです。」


本気で実家に帰りたいと思いました。
ていうか3人とも唖然としてないで助けて下さい。

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