※口調捏造※過去捏造 「ええ!!嫌ですよぉ!!」 室内に響く大きな声に自分でも驚いてしまう。目の前にいる王は依然として笑顔を崩さない。 「頼むよ名前、周りにはまだ秘密でな…君にしか頼めないんだ」 「い、いくら王の頼みでも暗殺者の世話だなんて…私には無理です!」 「そんなに堅くなるなよ…お前にしか出来ないんだ」 「シン…だいたい貴方も暗殺者を招き入れるなんて何事ですか!?貴方を殺そうとした相手ですよ?」 シンドリアの王、シンドバッド様にこの身を救われもう一年になる。生き倒れていた私を救い出しこの国に身を置いて、王のもとで働かして頂いている。死ぬまでこの身で恩を返し、彼についてゆくと決めたのだが…今回の彼の頼みだけは素直に聞き入れられなかった。 「彼もきっと何か目的があったんだ…頼むよ名前。それに彼は仲間になればきっと良い戦力になる」 「ちょ、仲間にする気ですか!?」 「ああ、だから今のうちにでも友達になっとけよ。お前友達少ないだろう?」 「ちょおおお!!!いっ居ますよ友達くらいいいい」 シンは悩んだ挙げ句、「なら仕方がない…これは命令だ」と暗殺者の世話をするよう、王として私しに命令した。立場上逆らえる筈もなく手を合わせ承諾の意志を示す。 「……仰せのままに、王よ」 シンから鍵を受け取り、食事と救急箱を持ち暗殺者がいる扉の前に立つ。はぁ…いきなり出てきて刺されたりしたらどうしよう。暗殺者さんは私よりも一つ年上らしい。最初だしシンも付いてくるかと思ったのに!!あの人逃げやがった!!剣術の稽古とか言い訳しやがって…私が死んでも良いのか!! 「…兎に角悩むより行動よ名前!」 意を決して扉を叩くが中からの返答はない。仕方無くシンから貰った鍵を使い恐る恐る扉を開ける。ああ怖いよお! 「し、失礼します。王からの命で本日から給仕をさせて頂きます名前です」 出来るだけ前を見ずに頭を下げて早口で自己紹介をする。シンを暗殺しようとするなんて絶対肝の据わった大男に違いない…なっ殴られちゃうかなぁ。返答もないし私絶対殺されちゃうよ!相手絶対怒っちゃったよ! 「……給仕?」 「はい…っえええええ!?え、嘘、小さい!!」 「………?」 部屋の隅に腰掛けていた少年は私が想像していた姿よりも遙かに小さくまだ子供だった。いや私もまだ子供だけどさ…暗殺者さんは中性的な顔立ちで肌は透き通るように白く銀色の髪をしている。口は包帯?布?で覆われているため表情のすべてが読み取れない。あ、顔にそばかすある。 「…あの男の差し金ですか」 「シンの事ですか?まぁそうですね。えっと…名前は…」 「………ジャーファル」 「ジャーファルちゃん…!立場上本当は貴女のこと許せないけどちゃんと給仕はさせて頂きます。ご飯はちゃんと食べて下さいね!愛情を込めて毎日我が城の侍女達が頑張って作ってくれているので…」 「…いりません。あと僕は女ではありません」 「えっ!!男の子なんですか!!」 てっきり見た目から女の子と間違えてしまったが彼は男の子らしい。ジャーファルくんは持ってきた食事も喉をとおさず断固給仕を断り続けた。彼の腕や脚には生傷が幾つもあるのだが彼はこれくらい大丈夫だと治療も断わり仕舞いにはもう二度と自分に関わるなと言ってきた。 それでも王からの命だと我慢し、私は彼を説得しようと毎日ジャーファルくんの所へと足を運んだ。彼は寝ている時とても穏やかな寝顔で眠っている。彼の脚には長い縫い目が刻まれていてきっと過去に何かあったんだと思う。暗殺なんてやるような子には見えない。彼は根は良い人なのだと思う。私は彼をどうにかして立ち直らせたいとその時とても強く思いめげずに毎日足を運ぶことにした。 「ジャーファルくん、ご飯一緒に食べましょう」 「こんな所で食事なんかしても気分が悪くなるだけですよ…」 「私がここで食べたいんです!」 「……そうですか」 最近は一緒にご飯を食べるのも許してくれるし名前も呼んでくれるようになった。それに最近は外に出るようにもなったし、自ら勉強するようになった。もう私は嬉しくて嬉しくて…私が見込んだ通り彼は凄く良い人なの! 「……名前」 「何ですかジャーファルくん?」 「あなたはあの男をどう思っているのですか」 「シンの事、ですか。どうって言われても彼は私の命の恩人で私の絶望しか無かった人生を変えてくれた人です。一生彼に使え彼にこの身を捧げるつもりです」 「………そうですか。あなたは彼を本当に慕っているんですね」 「ジャーファルくんだって最近心を許してるじゃないですか。それに、あなただってとっくにシンの虜だと思いますよ」 「…彼は変わった人ですよ。僕なんかを助けて…名前だって変わってますよ」 「……酷い!!」 「でも僕はそんな二人に感謝しています。だから僕も死ぬまであなた達に忠誠を誓いあなた達に尽くしていきたいと思います」 「じゃ、ジャーファルくん…!!」 「改めてよろしくお願いします名前」 「っていう可愛い過去があったのよ」 「ジャーファルお兄さん可愛いねぇ」 「でしょ〜!今じゃ仕事仕事って全然可愛く無いんだよ〜」 「アラジン、名前の話しは9割方嘘なので信じなくて良いですよ」 「えっ本当かい!」 宴の夜に食客としてシンドリアに滞在しているアラジン達一行に昔は可愛いかったジャーファルくんの話しをしていた。だが彼によって会話は阻止されてしまった。これからが面白い所なのに…! 「名前も呑みすぎですよ、もう歳なんだから下っ腹が出ますよ」 「私アンタより年下なんですけど!!」 「ほら部屋に帰りましょう。ではアラジン、アリババくん楽しんで」 「バイバイ二人共〜」 ジャーファルに連れられてゆく名前の姿を後ろで見送りながら二人は顔を見合わせる。 「なあアラジン、あの話し嘘だったと思うか?」 「いや名前さん凄く嬉しそうだったし本当なんじゃないかな」 「だよな〜なんだかんだ言っても二人共両想いそうだしな!いいなぁ…俺もあんな信頼しあえる恋人が欲しいぜ」 「ふふ、アリババくんにもきっと出来るよ」 たとえばそれが運命の出逢いだとして |