隣の家の緑間真太郎とはかれこれ十数年幼なじみをやっている。元々彼の母親と私の母親は同じ職場で仲が良く、度々緑間家と旅行に行ったりお互いの家を行き来することが多かった。


「ねーねー真ちゃん数学教えてよ。ねぇ、おい、シカトしないでよ、おい!」
「うるさいのだよ!お前が今まで課題を溜めとくのが悪いのだろう。自力でなんとかしろ」
「なんでそんなに冷たいわけ!?一緒にお風呂入った仲じゃん!真ちゃん私の裸を見たわけじゃ……痛い!痛いっ痛たた!すいません!嘘だよ!嘘だってば!」


緑間真太郎という男は頭脳明晰、成績優秀、運動神経抜群、そのうえ美人。と周りからは見られているらしい。一番仲の良いさつきが言ってた。
私から見れば頭脳明晰、成績優秀は只の勉強しすぎ、で運動神経抜群はただ背が高くてバスケやってるから、で美人は下睫毛長いだけ。なんだけどみんなどう思う?

小さい頃は可愛かったよ?「名前ちゃん、名前ちゃん」ってさ。それが今じゃ図体ばかりデカくなっちゃって……私は悲しいよ。


「ねぇ、いひゃいっては」
「黙れ」
「わきゃったひゃらはらしてってば」
「聞こえん」
「死ね」
「それだけは聞き取れた」
「いひゃい!いひゃい!しんたりょく…!しんたりょさま!しゅみましぇんでした!」

今だってさ私が必死の思いで苦手な数学を教えてもらって克服しようとしてるのに、少し暴言吐いたら頬を抓られるし。ていうか痛い、まじで痛い。

「いたた…もう!真ちゃん冗談も通じないわけ?…最近モテてるからって調子のってんじゃねーよ」
「聞こえてるぞ。殴るぞ」
「ね、断ったの?オーケーしたの?あの子4組の一番可愛い子じゃん」
「………知らん」
「何を照れてるのだよ」
「真似するな、うざいのだよ」
「ねー教えてよ!別に減るもんじゃないじゃん」

そしたら真ちゃん顔を背けて小さな声で「…断ったのだよ」って。
エエエエエエ!!なにそれ、めっちゃ勿体無いんですけど。


「………真ちゃん。そんなんじゃ一生彼女出来ないよ。只でさえ真ちゃんおはあさ信者というレッテルが貼られているのに…」
「俺にはそんなもの必要ないのだよ」
「一生結婚出来ないよ、一生独り身だよ、孤独死だよ」
「………………お前も」
「ん?なに?」
「お前もどうせ結婚出来ないだろう。その性格だからな」
「はぁ!?私結婚するし!私だって一応モテるし?こないだ1組の山田君に告られたし!!」
「なっ…!本当か!?」
「本当なのだよ」

すると真ちゃんが私の肩を掴んで超睨んでくる。前後に揺さぶられながら「そいつは誰なのだよ!?」とか「返事はどうしたのだよ!」とか物凄い形相で聞いてくる。怖いのだよ


「だーもー!先週!断ったから!」
「…そ、そうか」
「なに…真ちゃん…まさかやきもち!?可愛い幼なじみが取られるの怖かった!?」
「断じて違う。そもそも俺はお前なんて居なくても全然気にしないのだよ」
「なにそのツンデレ!可愛くない!」


上から偉そうにものを言うし、暴言吐いたら暴力で返してくるし、素直じゃないしムカつく幼なじみだけど…


「……ふん。どうせ名前は嫁にも行けないのだから、俺がもらってやっても良いのだよ」
「なにナチュラルにプロポーズしてんの」


案外可愛い所もあって嫌いじゃない。