エリス家の道場には沈黙と血の匂いがこびり付いて離れない。しん、と静まり返った床は手入れをされてるおかげで光沢感があった。その上を少年は音も立たない程静かに足を滑らせる。一つに束ねた金髪が揺れ動く。光を集め、弾いて煌めく様は美しい。しかし其れさえも彼の美しさを飾るものでしかない。剣の一族と呼ばれる自分たちエリス家の人間は、代々人間離れした美しさと強さを兼ね備えるのだ。美しさと引き換えに人らしい幸せも此処にはなかった。…姉であるルシルが両親を殺すまでは。

「ルシル…いるんだろう。話がある。」

「……何かな、フェリス」

 沈痛な面で、フェリスは目の前に姿を現した人物の肩を掴んだ。


「ルシル…お前はこんなに小さな肩をしていたのか」


 彼女には実体がない。化け物になってしまった姉の背を越えたのはいくつの時だったろうか。記憶を探るが、上手く思い出せない。

「いきなり君は何を言ってるのかな」

「いきなりじゃない…!私は、姉様が私の為に何をしたか知っているんだ。」

「誰から聞いたんだい?」

「そんなの誰でもいいだろうが!何故、一人で背負いこむ?」

「……。」

「だんまりか」

 視線を下にずらした姉を上から見下ろす。私は、彼女が変わったことに気づきながらも何もしなかった。あまりに大きな力にどうしたらいいか、分からなかったからだ。

ルシル姉様が私とイリスを守ってくれたことを知らないまま、こんなに時が経ってしまった。手遅れかもしれない。遅すぎたせいで、この小さな女の人を失うことを考えると堪らなく恐ろしい。

(でも、今の私はあいつに。あいつ等に会って変わったんだ。)

 簡単に諦めてやらないと、ライナがシオンに手を伸ばす姿を瞼の裏に思い描く。馬鹿で優しい相棒のしつこさが力になるようだった。届かなくても届くまで伸ばし続ける。フェリスはルシルの顎に手をあてがう。掬い上げて視線を合わさせると、見開かれた彼女の碧眼に遠い過去を見た。


「フェリ、ス…?」

「もう一人で犠牲になろうとしないでくれ…姉様、」

 頼むから。と言った言葉に返事はない。抱きしめたルシルの体温は氷のようだった。ぬくもりを少しでいいから移ってくれとフェリスは肩を抱く力に力を込めた。


end
なんやかんやでローランドに帰って来たねつ造フェリス♂とルシル♀話でした。問題は何も片付いてない状態。シオンのことはライナに任せる、フェリスお前は姉貴のとこ言ってやれ!な男前展開だったり。


・ルシル♀はフェリスより少しちっちゃい。髪はボブがいいなー!
・フェリス♂は美少年。身長はライナとシオンの間。


せっかくのにょたと男体化だったのにあんまり代わり映えしないお二人!
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