「…今度の文化祭で劇をやるんだ」
「へぇ、君も出るの?」
 スガタは目の前の男を上目で窺った。理知的な紫の瞳が愉しげに緩むのを見て、緊張した面持ちで言葉を紡ぐ。
「よ、良かったらあなたも見に来てくれないか…?」
 口にしてからしまったと思った。まるでこれじゃ彼に来て欲しいと望んでるみたいじゃないか。手で口元をを覆った時には何もかも遅かったが、これ以上余計なことを言わないよう己を戒める。ワコを口説きこそしても危害は加えないだろうが、敵である彼を学校に誘うのは気が引けた。
「いいの?なら…行こうかな」
続けられた言葉に、スガタは下がっていた頭を反射的に上げる。
「えっ…?」
「なんだいその顔。君が誘ったんじゃないか」
「そう、ですけど」
「俺は演技をする君を知らないから楽しみにしてるよ」
人の良い笑みを浮かべるヘッドに目眩を覚えた。どうせまたこの人は女の子を甘ったるく口説くに違いない。そんな姿を見たくないと思うのに。休みに会えるかもしれないの喜びの方が勝っていて、スガタは待ってますと小さく呟いた。
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