加虐的な目が一層深みを増し、ギラギラと光る刃のような光を灯したとき、その瞳とは裏腹に、私の頬をスルリと撫ぜる彼の手つきは、柔らかなものであった。それがなにを示しているのか、容易には理解しがたく、また常人ならきっと恐怖を抱くだろう行動に、私はおかしくなって、ふ、と息を洩らした。ギュウ、と純然に締めつけられる胸と圧迫されていく気管から、これがいわゆる『ときめき』だとかいう感情なのかな、とぽつりと笑った。そんなことを思惟したら、


「壊したくてたまらないのでしょうね」
「…別に」
「破壊衝動はあなたにとってドラッグみたいなものじゃない」
「生憎、人形はガラスケースに飾っとく趣味でよォ」
「私に依存しているのかしら?それとも私が怖いのかしら」
「テメェが言えた口かよ」
「かわいい」


馬乗りになっている彼のえりあしを一房手にとり、口づけた。多少ごわごわとした髪は完璧な皮膜でつつまれているとは言い難いが、しかしマリクのお香、もしくは香水が薄く香ったので、首筋に舌を這わせて、そして赤い花を一輪だけ咲かせた。それは私が主導権を握っているという証でもあり、また支配欲に駆られた心を表していた。きっとマリクにはこの余裕のない私に気づかないのだろう。かわいいと言われたマリクは、少しだけ眉を寄せて、不機嫌そうな態度をみせた。猫みたいだ。その様子がまた可笑しくて、喉あたりを指先でごろごろ転がした。一瞬目を細めたので、きっと悪い気はしていないのだろう、この男は態度に出やすい。



「見くびるなよ」


言うなり、不機嫌そうな表情を見せた彼の姿が消え、視界が一瞬だけ、真っ暗になった。反射的に閉じた瞼を開ける。熱い。押しつけられた唇から彼の体温が伝わってくる。私を渇望する彼の叫びが口内を荒らす。



「愛してる」



どうしようもなく重い愛が、私の背中に、まるで拷問かのようにのしかかって、なんたる獣のような愛情表現なんだ、と、背中の刺青に手を這わせる。傷跡まがいのそれは、刺青というには痛々しいほどに、わたしの人差し指に凹凸の感触を残した。溢れる愛しさが込み上げ、その痕をなぞりながら、彼に従属する証として、その烙印を甘んじて受け入れた。わたしは獣ではないからだ。つまり私は、彼にとって最も忠実な下僕として、誓いを立てたのである。

110220さりお
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