バクラ

2013/11/07 23:43

バイバイをした。
なぜかといえば、それは彼が私に別れを告げてきたからであった。



―どこで?

海で。


―どうして海だったか。

わたしが海が好きだからだ。


―なぜ好きな場所で別れを告げたのか。

だって人が発つのに、墓場とか暗いところだったら失礼でしょう。海はすべてを包み込む母なる存在であり神聖なところで、そんなところで朝焼けの空をバックに別れるのは、わたしたちにはあまりにももったいなかった、かもしれない。


―なぜもったいないのか。

彼は悪のかたまりだから。わたしは化け物だから、わたしたちはふたりとも、人間の皮を被った、人外であったから。


―どうして別れたのか。

どうしてだろう。


―嫌われたのか?

ちがう。


―ではなぜ?

彼は遠くに行くから。


―どこへ?

それは、どこかといえば、それは…





これを答えたらだめだ。ここで言ったことは、きっとすべて現実となる。だめだだめだ絶対だめだ。答えてなにになると言うんだ?こうして自問自答するばかりが果たして人生なのか。認めたら彼は本当に、わたしの前から、居なくなってしまう。








居なくなって、しまう。










わたしは誰にバイバイしたんだろう。彼に?自分に?それともこの世界に?






そう彼は闇に還った本来の場所に戻ったのだもともと彼は闇そのものであり悪を絵に描いたようなやつだった人間ではなかったし器だって居なかったけれどわたしは十分それで満足していたしかし3000年の歴史を経たひとつの闘いにわたしが入り込めるはずもなくしかたなく彼にバイバイした、そう、わたしはバクラに、さよならを教えてあげたのだ。



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