次元

2011/01/20 14:22

ぐらぐら

寝癖も直さずぼさぼさの髪でリビングに行ったら、すでに起床し、タイトなスーツを着込んだ次元が居た。そこらじゅうに読み終わった雑誌だの、最近使っていない安物のコスメだのが散乱していた。部屋は昨日つけたパフュームの匂いがかすかに残っていて、彼の吸う煙草と混じって、粗雑な環境の香りがした。
「起きたか」
「うん。もう行くの?」
「ああ」
「また来て」
「ああ」
「ねえ、どれくらい待てばいい?」
「わからん、もうこの国には来ないかもしれねえ」
「…そう」
「寂しそうなツラだな」
「顔も見てないのに、何言ってんの」
「見なくてもわかるんだよ」
「来て、絶対」
「仕方ねえなあ、甘えたちゃん」
「会いたいの、次元に」
たぶんこうやって甘く言葉を囁いても、有り得ないけど大金を積んでも、どうやったってこのひとは立ち止まってくれない。いつだって遠くに居るんだから、でもいつだってわたしのことをわかってくれるから、気にかけてくれるから、この泥棒に愛想をつかすなんてことできないんだろうな、次元、こんなにあなたのことを思ってあげられるのはこのわたしだけよ。ぼうっとドアの近くに立っていたら、フイと次元がこちらを向いた、交わる視線ににこりと笑えば、また煙草が香ってきた。これでいい、このままでいいんだ。



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