ハリー
2011/01/29 20:12
数多の命を背負う背中は、こんなにも逞しいのにひどく小さいものに思えた。君はどこにも居なくならないよね?今にも消えそうなそれに問いかけたが、残念ながら周りの喧騒で聞こえなかったらしい。人々が逃げ惑い、また戦っている渦中に、わたしは動かずにぽつりとホールに立っていた。容赦なく降り注ぐ、緑の閃光の雨の横、しばらく彼の後ろ姿を見送っていた。絶対に戻ってきてよね。喧騒がいちだんと大きくなったあと、踵を返して、正門のほうへと向かった。世界の終わりがここで告げられるかもしれぬ可能性のあることが、いたく滑稽で、わたしの唇が弧を描いた。
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