みどりの日(前編)

紅茶の淹れられたカップが4つ。その横にはクッキーののせられたお皿が1枚。しかし周りには誰もいない。私は困ったように髪をかきあげる。
はて、私は言われた通りの場所に来たつもりなのだが。もう一度辺りを確認してみるがやはり人と思わしき影は一つもなく、静かな休憩室に私だけが1人ぽつんと立っているだけだった。
そもそも、この紅茶とクッキーを用意した人物はどこへ行ってしまったのか。恐らくその人物はこれから同じチームとなるのだろう。だったら尚更早く姿を現していただきたいものだ。

「…とりあえず、座ろう。」

一番近くの椅子に座り頬杖をつく。窓の外を覗いてみれば編成されたチームメイトと交流を図るグループがちらほらと見えた。ふぅと息をついた、その時、ふっと目の前が暗くなる。

「遅かったね。どこ行ってたの。」
「すみません、ちょっと知り合いが騒いでいたので落ち着かせていました。」

少し癖のついた金髪の男が困ったものですよと呟く。どこかで見たことがある気がしたが思い出せなかった。まあいいか。

「この紅茶とクッキーはあんた?」
「はい。よかったらどうぞ。」
「…いただきます。」

ふぅと冷ましてから一口。苦すぎず甘すぎず。好みの味だった。美味しい…と正直に感想を述べればお粗末様です、と彼が微笑んだ。
と、そこへ1人の少女が慌てた様子で走ってくるのが目に入る。背の高い少年の腕を引き何かを話していた。

「揃ったみたいですね。」

金髪の彼が呟くとほぼ同時にこの場に辿り着いた少女は息をきらしながらごめんなさい!と頭を下げる。少年はというと息一つきらしていない。

「遅れちゃって申し訳ないです…。」
「先生…呼ばれた…。」
「気にしなくていいよ。」
「さあ、お2人も座ってください。自己紹介でもしましょうか。」

さっきと同じように微笑む彼に2人はほっと胸をなでおろしたようだ。私はクッキーを一枚いただき再び美味しい、と呟いた。

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