Strange one day ‐noon‐

「…。」

特にすることもなく、時間が流れていく。孝介はというと自分で持ってきたらしい大きな本を膝にのせて黙々と読み続けている。未だに会話はない。

「(気まずい…。)」

餓鬼の子守りなんかしたこともない俺にとってこの静寂が妙に気まずい。孝介は恐らく他の餓鬼とは違って騒がしいタイプではない。子供のくせに静かすぎないかと思うほどだ。飽きもせずに本を読み続けている少年に俺はふうと息をついた。困った。これはかなり困ったぞ。こんなんで明日の昼まで預かれるのか…というか、本当に俺でいいのか?もっと他にあったんじゃないのか。子供好きな奴なんて探せば学院中にたくさんいるだろう。それこそリンネや姫なら快く引き受けてくれただろうに。

「…劉院兄ちゃん。」
「…!ど、どうした?」

突然口を開いた彼に俺は一瞬どもってしまった。まさかあっちから声をかけてくるとは思ってもいなかったからだ。

「…トイレ。」
「あ、ああ…。トイレな。この部屋出て左に行けばあるから。」
「…ありがとう。」

とことこと部屋を出ていく孝介。そんな彼を見送り、俺はため息をつくと机に突っ伏した。ダメだ。俺には餓鬼の子守りなんか無理だ…。どう接したらいいのかさっぱり分からないしこれからどうしたらいいのかも分からない。チラリと時計を見る。時計の針は11時30分を指してる。

「…昼飯。」

重い体を半ば無理やり立たせた。ソファに乱雑に投げられているエプロンをすくい上げ慣れた手つきで縛る。冷蔵庫を開ければ大したものが何もないことに気がついた。そういえば、今日は買い物に行くつもりだったっけ。ああ、もう、めんどくさい。とりあえず昼飯はうどんだな。

「孝介、昼飯うどんでいいか?」
「うん、うどん、好き。」

ちょうどトイレから戻ったらしい孝介に問えば素直に頷く。少し待ってろ、と鍋に水をいれながら声をかければ再び短い返事が聞こえた。

うどんは程なくして完成した。孝介を呼んでどのくらい食べるかを確認する。俺のより少し小さめのお椀にうどんをいれ冷ます場合に使うだろうとお椀をもう1つ持っていく。テーブルの上において、俺がいただきます、と食べ始めればそれに見習って孝介もいただきます、と食べ始めた。

「…なあ、俺ちょっと午後から買い物行きたいんだけど。」
「…?」
「………えーと…お前、どうする…?ついて、くるか…?」

一瞬、きょとんと孝介が瞬きをして妙な間が空く。しかし、静かにこくんと頷いたようだ。それはついてくるということでいいのだろうか。再び黙々と食べ始める彼にまあいいか、と俺も再び食べ始めた。夕飯は何にしようか、と思案する。子供が好きそうなもの。とりあえず、買い物しながら孝介に食べたいものでも聞いてみよう。

30分程でうどんを食べ終えた孝介は自ら食器を流し台に運ぶ。それを見てしっかりしつけられてなんだなと少し関心し、自分も片づけるために立ち上がった。洗い物は夕飯後にまとめてでいいか、と軽く水につけるだけにとどめ、さて、と振り返った。

「買い物行くか。」
「…うん。」
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