Strange one day ‐morning‐

「えっと…。」
「つーわけで、一日孝介のこと頼んだぜ!」
「いや、なんで!?」

よく晴れた日曜日の朝のこと。俺は玄関の前で痛む頭を押さえて目の前に立つ人物に声を挙げた。黒い髪にバンダナを巻いた彼は記憶が正しければチームKの冠渚さん。そしてその隣にちょこんと立って俺を見上げているのが孝介だ。正直どうしてこの2人が俺の家を訪ねてきたのかさっぱり理解できない。

「詳しくは私が説明してあげようじゃないか!」

突然、冠渚さんの後ろから見慣れた人物、従姉弟である劉燐が顔を出した。げっと声を漏らせば文句あるのかと鼻を抓まれる。文句はもちろんあったがこいつに何を言っても聞いてくれないというのは知っているので諦めて説明を促した。

「孝介君の親御さんが明日まで家を留守にするらしんだよね。だからチームKの誰かのお家にお邪魔する予定だったんだけど、どうやら今日はみんな予定が空いていないらしい。」
「俺これから主の会合にお付きで行かねーとなんだよね。」

冠渚さんが少し申し訳なさそうに顔の前で両手を合わせた。孝介はずっとそんな彼の服の袖を掴んで俺を見上げている。なんとなく状況は理解した。が、それがどうして俺の家に来ることに繋がるのかはさっぱり理解できない。いや、理解したくない。

「つまり、どーゆーこと…?」
「明日のお昼まで孝介君預かって☆彡」
「却下。」

劉燐が軽く言ったことを俺は即答で断った。どうして俺が他チームの餓鬼の面倒を見なければいけないんだ。チームKなんてろくに関わったことのないチームだぞ。だいたい孝介の意見は聞いたのか。普通に考えて他人の家に世話になるなんて嫌だろう。俺だったら絶対に嫌だ。

「本当は私が預かれればいいんだけどあいにくこれからひと旅行く予定でね…。まあお互い助け合うのも大切じゃない?」
「そーそー!今度礼はすっからさ!」
「そんな軽く頼むんじゃねーよ!つーかなんで俺!?」
「暇してるって聞いたから。」
「誰に!?」
「隼人さん。」

初めてバイト先の店長を恨んだ瞬間だった。もしかしてあの人もグルだったのではないかと思えてきた。日曜日に俺だけ休みなんておかしいなとは思っていたんだ。きっとこれは何かの横暴だ。なんて、納得がいかないと2人を睨みつけてみたが相変わらず2人の表情はへらへらと笑顔を浮かべているだけだ。どうやら、拒否権を与えてくれるつもりはないらしい。

「まあ、お土産買ってきてあげるから!」
「やべ、俺もう行かねーと!じゃ、後頼んだ!」
「いや、ちょ、待っ…。」
「孝介、劉院の言うことちゃんと聞くんだぞ?」
「…うん。」
「じゃ、あとよろしくー!」

そんなこんなで、今日も俺は従姉弟の理不尽な頼み事を押し付けられることになった。風のように去って行った2人の後ろ姿を見送りながら、なんて一日だ、と溜息をこぼす。ふいに、孝介が俺の袖を引っ張った。

「よろしく…お願いします。」
「…とりあえず、あがれよ。」

こうして、俺と孝介という不思議な組み合わせの一日が始まった。
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